飲食店チェーンの遊食房屋(香川県観音寺市)は20日、讃岐うどんを餌にして育てたムラサキウニの販売を開始した。当面は生食用として丸亀店(丸亀市西平山町)で1日10食限定で販売する一方、将来的には養殖工場の移転拡大や全国展開も計画。海底の海藻を食べ尽くして「磯焼け」を引き起こし、漁業者から厄介者扱いされてきたウニが高級食材となり、香川の新名物に名乗りを上げる。


1人前1650円で販売を開始した「讃岐うどん雲丹」と養殖実験に取り組んだ多度津高生ら=香川県丸亀市西平山町

1人前1650円で販売を開始した「讃岐うどん雲丹」と養殖実験に取り組んだ多度津高生ら=香川県丸亀市西平山町


 磯焼け対策や食品ロスの削減を目的に、2023年にスタートした産学官連携の「『讃岐うどん雲丹(うに)』プロジェクト」の一環。同社と多度津高校が陸上養殖実験に取り組み、今年4月には同社が商品開発拠点を整備するなど商業化に向けて生産力を増強した。
 養殖前のムラサキウニは高松市の庵治沖で駆除されたもので、餌は系列店で廃棄されるうどんを使用。陸上のいけすで2カ月程度養殖すると、食味に適した身入りになり、一般的なウニより中身の色が白っぽく、えぐみの少ないクリーミーな味に仕上がるという。
 20日には販売開始を記念した試食会が行われ、関係者ら約20人が参加。開発に携わった同校卒業生の竹本葵さん(18)は「私たちが育てていた頃はここまで身入りが良くなく、味もただ甘いだけだった。ウニらしくなっていてびっくり」と声を弾ませた。
 プロジェクトでは駆除するウニの商品価値を引き上げ、漁業者の新たな収入源にすることも一つのゴールに掲げる。潜水漁で協力している高松市庵治町の塩田友和さん(49)は「取ったばかりのウニは身がスカスカ。ここまでおいしくなるとは」と“変貌ぶり”に驚きを隠せなかった。
 同社は商業的に持続可能な事業とするには年間15万~20万個の生産が必要とするが、ウニの駆除や餌の手配は道半ば。同社の宮下昌典社長は「単なる食材の供給にとどまらず、地域の漁業や海洋環境の保全、観光や食文化の発展にも可能性を秘めている。多くの人の協力を得ながら事業を前に進めたい」と話した。

(四国新聞・2025/10/21掲載)



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