かつて金刀比羅宮の参詣道として栄えた多度津町の本通。古い町並みをそろそろと車で走っていると、「ゆ」と書かれた大きなのれんが目に入る。「藝術喫茶 清水温泉」は、まちづくりを考える住民グループが古くからの銭湯を改修したアートカフェ。かつての銭湯のように人々が集い、懐かしくてほっと心が温まる、そんな空間だ。


レトロなタイルが貼られた湯船を座席に。壁にはヒダカさんの絵が描かれている=多度津町の藝術喫茶 清水温泉

レトロなタイルが貼られた湯船を座席に。壁にはヒダカさんの絵が描かれている=多度津町の藝術喫茶 清水温泉


 「ゆ」ののれんをくぐると、「男湯」「女湯」と書かれた扉がある。「女湯」の扉を開けると、左手には漢数字が書かれたロッカーがあり、番台も昔のまま。昭和の銭湯の雰囲気をそのまま残している。


入り口には「ゆ」ののれんが掛かる=多度津町の藝術喫茶 清水温泉

入り口には「ゆ」ののれんが掛かる=多度津町の藝術喫茶 清水温泉


 脱衣所だったところと洗い場がカフェの座席になっている。「女湯」側は、レトロなタイルが貼られた湯船を座席に。銭湯時代の料金表など看板も古いものが残されている。見上げれば、オーナーの日高明道さん(55)の長男でアーティストのヒダカナオトさん(26)の壁画がある。竜やお風呂に入る動物たちを描いていて、何ともほっこりとした雰囲気だ。
 
 カフェではオリーブ牛やオリーブ豚を使ったランチのほか、三豊市高瀬町の二ノ宮地区の茶葉を使ったかき氷「二ノ宮金時」などを提供する。二ノ宮金時は「宇治金時」のようなブランド化を目指しているそう。

 日高さんは、奈良市でギャラリーを経営する中で多度津を知り、ついには移住。多度津愛がたっぷりで、「こんぴらさんや祖谷渓、道後温泉など四国観光の中継地点になれれば」と意欲を燃やす。多度津を「人が人を呼ぶ地域にしたい」と夢を語ってくれた。

 カフェという形態を取ることで、自然と人が集い、文化が生まれる。カフェの中には日高さん親子らアーティストが制作した作品があちこちに飾られている。ネコをモチーフにした作品も多く、にっこりとしたネコたちが人々を招いているかのように見えた。

 営業時間は午前10時からで、午後9時ラストオーダー。水曜日定休。問い合わせは同店〈0877(89)3587〉。

(四国新聞・2019/06/25掲載)


番台ではネコがお出迎え=多度津町の藝術喫茶 清水温泉

番台ではネコがお出迎え=多度津町の藝術喫茶 清水温泉


藝術喫茶 清水温泉


所在地 香川県仲多度郡多度津町本通1-7-8
営業時間 10:00~22:00(ラストオーダーは21:00)
定休日 水曜日
TEL 0877-89-3587


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