三豊市内を車で走っていると、町並みの中に五重塔が見え隠れする。財田川と四国霊場70番札所・本山寺の五重塔という組み合わせは、地元の人たちにとって古里を象徴する風景なのではないだろうか。五重塔は昨年、3年にわたる修復工事を終え、生まれ変わった姿を見せている。五重塔の歴史と魅力に迫った。


国宝に指定されている本堂


 本山寺五重塔は1910(明治43)年、頼富実毅住職の時代に再建された。頼富住職は、廃仏毀釈(きしゃく)という逆境の中にありながら伽藍(がらん)再興に挑んだ明治時代の2人の住職の意志を受け継ぎ、寄付金を募り、出開帳を行うなどして境内の整備に取り組んだ。

 それから100年以上がたち、塔には老朽化が目立っていた。工事にあたっては、三豊市出身の岡田恒男東京大名誉教授が顧問を務めるなど経験豊かな専門家による整備委員会が組織された。日本の伝統的工法を大切にしながら、適所で金属の素材を活用。これらの金属の部材は次の修理時には全て取り外せるようになっており、「次の100年」を見据えた修理が行われた。


生まれ変わった五重塔。境内ではロウバイが見頃を迎えていた


 生まれ変わった五重塔を見てみると、その姿がとてもきゃしゃであることに気付く。初層と五層の屋根の大きさにあまり差がないため、ほっそりして見えるのだ。例えば奈良県の法隆寺なら、もっと安定していて重厚な印象を受ける。

 瓦にも注目してみてほしい。東側だけ創建当時の瓦が使われていて、色が違っている。真新しい瓦と長く風雨に耐えてきた瓦のコントラストが美しい。

 塔の心柱には「重量箱」と呼ばれる重しの箱が取り付けられ、中にはお経の文字を書いた石が詰められていたという。修理の際には五重塔の相輪や玉垣、基壇の模型も発見された。模型は塔再建前に作られたものとみられ、それだけ頼富住職が再建に情熱をかけていたということだろう。

 工事は終了したが、落慶式はまだ先のこと。塔の仏像4体を修理、1体を仏師に新しく作ってもらうことになっている。脈々と受け継がれてきた伽藍復興の精神は、令和の世に続いていく。


財田川越しに見る五重塔=いずれも三豊市豊中町


(四国新聞・2020/02/04掲載)

本山寺


所在地 香川県三豊市豊中町本山甲1445
駐車場 あり
TEL 0875-62-2007


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