坂出市沙弥島の県立東山魁夷せとうち美術館で4日、テーマ作品展が始まった。古都の季節の移ろいやヨーロッパの豊かな自然、荘厳な建築物などが描かれており、来館者は心に染み入ってくるような国内外の美しい光景に見入っている。7月19日まで。


京都の四季の移ろいや西洋の風景が紹介されているテーマ作品展=坂出市沙弥島、県立東山魁夷せとうち美術館


 京都市の円山公園を取材地とする「花明(はなあか)り」は、満開のシダレザクラが満月の優しい光に包まれて幻想的に浮かび上がっている。修学院離宮の「緑潤(みどりうるお)う」は今の季節と同じくみずみずしさにあふれ、「秋彩(しゅうさい)」は赤と黄色の紅葉が鮮やかに山を染め上げている。

 西洋の風景は、東京美術学校(現東京芸術大)卒業後に留学したドイツをはじめ北欧やフランスなどが舞台。フランス・パリ郊外の公園を描いた「静唱(せいしょう)」は、直線的に並んだポプラ並木が水面(みなも)に映り込み、上下対称の構図が美しい。ドイツの大寺院の塔が主題の「晩鐘(ばんしょう)」は、子どもたちが塔を管理する老人にお礼の合唱を披露し、何度も「ダンケ・シェーン(ありがとう)」と伝える心温まる情景を思い出しながら制作したことが紹介されている。

 同美術館の学芸員は「新型コロナウイルスで旅行が難しい時期だけに、魁夷さんと一緒に旅するような気持ちになって鑑賞してもらえれば」とし、友人と訪れた高松市国分寺町の間島味紀枝さん(70)は「好きな京都のさまざまな景色が見られてうれしい。特に花明りの桜は素晴らしい」と話した。

(四国新聞・2020/06/05掲載)

東山魁夷せとうち美術館


所在地 香川県坂出市沙弥島字南通224-13
TEL 0877-44-1333


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