香川県善通寺市のうどん店経営、岸井正樹さん(60)が鹿児島県で野ざらしになっている寝台特急「ブルートレイン」を遍路宿としてよみがえらせようと取り組んでいるプロジェクトで、車両2両が18日、香川県観音寺市大野原町の雲辺寺ロープウェイ山麓駅の第2駐車場に移設された。3泊4日、約700キロに及ぶ大掛かりな移送作戦は無事成功。「四国遍路の駅 オハネフの宿」の名称で年内の開業を目指し、車両の修繕や電気、水道などの整備を進める。


鹿児島から移送後、雲辺寺ロープウェイ山麓駅の第2駐車場に設置されるブルートレイン=観音寺市大野原町

鹿児島から移送後、雲辺寺ロープウェイ山麓駅の第2駐車場に設置されるブルートレイン=観音寺市大野原町


 2両は寝台特急「なは」として、かつて大阪や京都と九州を結んだ車両で、うち1両は希少価値の高い全室2人用個室の「デュエット」。

 移送は専門の業者に依頼し、車両を2台のトレーラーに積んで15日午後9時、置かれていた鹿児島県阿久根市を出発。車両は33トンあり、高速走行ができないため一般道を利用し、大分県から愛媛県まではフェリー会社の協力を得て定期便で運んだ。

 最後の難関だったのが雲辺寺ロープウェイ山麓駅まで続く約3キロの細い山道。早朝の時間帯を選び、何度も切り返しを試みながら、2両目が18日午前7時前に到着した。到着後直ちに設置作業を開始。クレーン車2台を使って慎重に車体をつり上げ、あらかじめ敷いておいたレールの上の台車に載せた。

 遍路宿の名称は「なは」の車体を表す記号を組み合わせて付けた。岸井さんは「海も山も眺められる場所。星空も抜群に美しい。まずは剝がれた塗装の塗り直しや割れたガラスの補修など、一つ一つ準備を進めたい」と意気込みを語った。

 移設にかかる約1300万円はクラウドファンディング(CF)で調達した。CFに協力し、現地で設置作業を見守った愛知県大府市の宮田宜知(たかし)さん(48)は「一時代を築いたブルトレには思い入れがありすぎるほどある。オープンすればぜひ泊まりに来たい。ブルトレが廃止され、乗ることができなかった若い世代の人にも疑似体験してもらいたい」と話した。

(四国新聞・2021/04/20掲載)


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