国の登録有形文化財である大きな屋敷で讃岐うどんが味わえる「うどん本陣山田家」(高松市牟礼町)。1978(昭和53)年創業のうどん本陣山田家をプロデュースしたのは、琴平町出身の画家和田邦坊(1899~1992年)だ。今夏、改修を終えた店内には、邦坊の未発表作品が展示され、おいしいうどんとともに邦坊らしい民芸調の世界を味わうことができる。

 邦坊は山田家の創業者である山田潔会長の伯父にあたる。山田家は元々大庄屋で、明治維新以降酒造業を営んでいたが、戦後に廃業。サラリーマンだった山田会長がうどん店を開業した。


「鍾馗と鬼」(左)など和田邦坊の未発表作品が展示されたホール。奥には対のびょうぶがある=高松市牟礼町、うどん本陣山田家


 未発表作品が展示されているホールは、以前は和モダンな空間だったが、店内を民芸調にそろえようと、本館と新館、別館とともに改修した。

 展示している作品の一部は、東京ソラマチ店の店舗デザインも手掛けたシティング(高松市)の小西洋一代表から寄贈を受けた。小西さんと小西さんの父は長年邦坊の下で店舗の設計や施工などに関わっており、今回の改修もシティングが担当した。


改修で新しく作った照明の傘は小西さんが描いた。力強い筆致が邦坊を思わせる=高松市牟礼町、うどん本陣山田家


 ギャラリーのようなホールには、紅梅と白梅が描かれた対のびょうぶのほか、道教系の神様である「鍾馗(しょうき)」と鬼を描いた作品などを展示している。くつろいで寝転がった鍾馗は愛きょうある表情。鍾馗のモチーフは土産用のカレーうどんにも採用されている。紅梅と白梅も華やかな雰囲気で、お屋敷でうどんを食べるという特別感たっぷりの山田家の空間によく似合う。


重厚感ある長屋門が出迎えてくれる=高松市牟礼町、うどん本陣山田家


 新館は、以前は見せていなかった梁(はり)を出し、天井をベンガラを思わせる朱色に。中央にいろり風のテーブルを置いた。ホールや本館にも使われている照明の傘は、小西さんが新しく描いたという。遊び心にあふれた筆致は、まさに邦坊の絵の雰囲気だ。店のあちこちに、邦坊の気配が残されている。

 営業時間は10:00から20:00。年中無休。問い合わせは、電話087-845-6522。

(四国新聞・2019/11/26掲載)

うどん本陣山田家


所在地 香川県高松市牟礼町牟礼3186
営業時間 10:00~20:00(ラストオーダー 20時)
定休日 年中無休
TEL 087-845-6522


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