伝統的な町並みが続く直島の本村地区は戦国時代の城下町で、南北に細長く、東西に行き止まりがたくさんあるのが特徴だ。その本村地区周辺で、建築家の三分一博志さんが集落の風や水の流れを研究し、直島ホールなど一連の建築シリーズを作り上げている。


ホール内部の天井にはしっくいが使われており、真っ白な空間は開放感にあふれている

 直島ホールは町役場のすぐ南側。ヒノキの板葺(ぶ)きの屋根がひときわ存在感を放っている。中に入ってみると、外よりも少しひんやりとした空気を感じたが、ホール内には冷暖房設備はない。ホール棟は屋根の風穴を抜ける力を利用し、集会所棟は井戸水が天井を巡回する仕組みだ。本村の集落にはあちこちに井戸があり、先人たちの知恵を生かし、井戸の新しい価値を見いだそうと試みている。

 成人式やシンポジウム、コンサートなどのほか、バドミントンやドッジボールといったスポーツなど幅広く使えるのも特徴。舞台は女性だけで構成する人形浄瑠璃一座「直島女文楽」の公演でも使われた。


19日に開かれた「直島女文楽」の公演では箏(そう)と尺八の演奏もあった=直島町、直島ホール

 直島ホールは2017年に日本建築学会賞作品賞を受賞。町によると、見学者も絶えないという。

 瀬戸芸の会期中には、三分一さんが築200年の旧家を改修した「The Naoshima Plan 2019『水』」に立ち寄るのもおすすめ。

 本村の家屋は南北に風が通り抜ける構造になっており、水上のデッキでくつろげばそのことを実感できる。直島ホールと同じように、井戸もある。自然に寄り添い生きてきた先人たちに思いをはせつつ、町歩きの疲れを癒やそう。

 直島文化村と福武財団が開催する「直島建築ツアー」では、通常は非公開の個人住宅「またべえ」も見学できる。またべえは本村地区の古民家改修のお手本にしてもらおうと、三分一さんが手掛けた。涼しげな庭が美しい。


普段は非公開の「またべえ」の庭=直島町内

 ツアーは7月27日、8月3、17日のほか秋会期にも実施する。問い合わせは直島文化村〈087(892)3246〉

(四国新聞・2019/05/28掲載)

直島ホール


所在地 香川県香川郡直島町696-1
TEL 087-892-2882
ツアーの開催日 7/27・8/3・8/17
ツアーの問い合わせ 087-892-3240(直島文化村)


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