香川県さぬき市津田町の海辺に広がる津田の松原は「日本の渚(なぎさ)百選」に選ばれ、絵画の題材や映画のロケ地としても知られる県内有数の景勝地。白砂青松の景観と開放感を味わおうと、9月中旬に津田の松原を訪ね、周辺を散策した。


日本画家・平山郁夫が津田の松原を写生したことを示す記念碑


 津田の松原までは高松中央インターチェンジから高松自動車道で約20分。東西に約1キロにわたって続くクロマツの群生の中間付近にある「道の駅 津田の松原」に車を止めて、まずは砂浜に沿って東へ向かった。

 津田の松原は、道の駅の近くにある「石清水神社」の防風林として江戸時代初期にマツの苗を植えたのが現在の始まりとされ、1915(大正4)年に県立公園、56(昭和31)年には国立公園の指定を受けた。例年は海水浴場がオープンし遊泳やマリンスポーツ目的の客が詰めかけるが、今年は新型コロナウイルスの影響で昨年に続き開設が中止に。取材に訪れた日は気分だけでも海遊びを楽しもうと、砂浜で貝殻を拾う夫婦や足首を海水に漬けて歩く親子連れらが数組見られた。


津田の松原が誕生するきっかけになった石清水神社の本殿。県内では唯一のニホンオオカミの狛犬がある


 松原の東端に隣接する「国民宿舎クアパーク津田」の駐車場に出たところで折り返し、今度は松林の中を通る道を歩いてみた。こちらは砂浜に比べると静かで、マツの緑が目に優しい。しばらく北西へ進んでいくと、日本画家・平山郁夫が写生した地を指す記念碑を見つけた。この絵は後に香川県民ホール(レクザムホール)の大緞帳(どんちょう)の原画に使われている。記念碑には平山の絵が添えられており、幹が左右に湾曲したマツの大木と砂浜の向こうに無人島「名古島」や、半島のようにせり出した同町鵜部(うのべ)地区が見える構図になっている。実際の木立と見比べながら、しばらく画伯気分を味わった。

 レクザムホールの職員によると大緞帳は2種類あり、通常は猪熊弦一郎の抽象画「太陽と月の住むところ」を基にした第1緞帳が下ろされている。ただし催し物の主催者が希望した場合は平山の第2緞帳を使うことができるそう。レクザムホールを訪れる際は、緞帳に注目してみてほしい。

 松原の中間から西には「七福神」になぞらえた7本のマツや赤い欄干が目を引く「願い橋・叶(かな)え橋」、全国各地の松原から記念植樹した木が立ち並ぶ。往年の名作映画のロケ地になったことを紹介する看板もあり、コロナ禍が収束し、松原ににぎわいが戻る日が待ち遠しくなった。

 道の駅駐車場に戻る前に、松原誕生のきっかけとなった石清水神社に立ち寄った。同神社は厄よけのご利益があるとして地元民から愛されるほか、香川県内で唯一ニホンオオカミを模した狛犬(こまいぬ)があることでも知られている。参拝を済ませて帰ろうとすると、本殿から三毛猫が近寄ってきた。猫は同神社にいつの間にか住み着いた「みけちゃん」。思いがけない癒やしにほっこりしながら、帰路に就いた。

(四国新聞・2021/09/25掲載)

津田の松原



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