1891(明治24)年創業の川鶴酒造(香川県観音寺市本大町)。同社の敷地内にある「せらびい工房」と旧瓶詰蔵「鶴鳴館(かくめいかん)」では、毎月1~5日、一般の出展者による手作り雑貨やアンティーク品などを展示販売している。期間中はお気に入りの品との出合いを求めて県内外から多くの女性らが訪れ、地域に活気をもたらしているという。現場を見てみようと車を走らせた。


「せらびい工房」の店内。川鶴酒造の法被などが飾られている=観音寺市本大町

「せらびい工房」の店内。川鶴酒造の法被などが飾られている=観音寺市本大町


 同所で展示販売のイベントが始まったのは約20年前。同社5代目社長の妻・川人裕子さん(84)が、酒造の手伝いの傍らに始めた、趣味のパッチワークの作品を展示する会場などとして使用していたが「にぎわいづくりをしたい」との考えから、出展希望者の作品や収集品を展示販売するスペースとしての活用を思い立った。
 せらびい工房は従業員の自転車置き場として使っていた約70年前の建物。約32平方メートルの店内には同社の法被や杉玉などが飾られていて酒造会社の雰囲気が漂う。取材した日は、高松市の作家によるクリスマスをテーマにした雑貨などが並び、女性らがじっくりと品定めをしていた。
 出展者の品物に加え、同社の酒を使った「日本酒ケーキ」や前掛けで製作したトートバッグなど同社オリジナルのグッスも充実していて、友人らへのお土産として購入する人も多いという。期間中は、川人さんが訪れた客を入れたてのコーヒーでもてなしており「いろんな人と話すのが楽しくて。これがやめられない理由でもある」と目を細めた。


大正時代建造の旧瓶詰蔵「鶴鳴館」は当時の趣が残されている

大正時代建造の旧瓶詰蔵「鶴鳴館」は当時の趣が残されている


 同工房と隣接する鶴鳴館は大正時代建造の建物で、2002年に国の登録有形文化財になった。約140平方メートルの建物内にはかつて使われていた酒だるや木製の桶(おけ)などがあり、当時の趣が残されている。この日は愛媛県今治市の出展者がアンティークの食器や古ぎれを使ったバッグなどを出品。レトロな品物の数々と同館の様相がマッチしていた。
 同工房の向かいにある米蔵だった川鶴資料館(登録有形文化財)では暖気樽(たる)や角樽、明治期の看板など創業時からの道具を展示しており、同社の歩みを知ることができる。現在は酒造期のため見学の受け付けを停止しているが、春から夏にかけては再開する予定。
 次回の同工房と鶴鶴館でのイベントは来年2月1~5日に開かれ、藍染めの洋服や手作りのひな人形などが並ぶ。酒樽などが並ぶ歴史的な建造物に触れられるだけでも訪ねる価値があると思った一日だった。

(四国新聞・2023/12/09掲載)



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