瀬戸内国際芸術祭2019の春会期に参加した作家のYotta(ヨタ)が、坂出市沙弥島のナカンダ浜で制作を進めていた作品が完成し、2日にお披露目された。かつて瀬戸内海で見られた海上漂泊民の総称「家船(えぶね)」をモチーフに、廃船を再生したアート作品。航行も可能で、完成披露に続いて進水式も行い、地域住民らと船出を祝った。


「家船」をモチーフに公開制作が続いていたヨタの作品と、完成を祝う地域住民ら=坂出市沙弥島


 ヨタは、木崎公隆さんと山脇弘道さんが2010年に結成したユニット。ジャンルや枠組みなど、あらゆる価値観を融合させるような制作活動を行っている。
 瀬戸芸には今回が初参加で、4月からナカンダ浜で「ヨタの漂う鬼の家」プロジェクトとして制作を開始。春会期内に完成しなかったため、引き続き公開制作を続けていた。

 作品は、坂出市瀬居町の住民から提供された全長14メートルの廃船を再び航行できるように修復しつつ、海の民「家船」の生活をイメージして木造の住居部分を構築。色鮮やかな大漁旗が船尾ではためいている。

 2日の完成披露には綾市長や地域住民らが集まり、命名式で作品名「ワンダーえびす丸」を発表。ヨタの2人が「地元の方と一緒に作った作品。まだ手を入れる部分などがあり、坂出に拠点を構えるつもりなので引き続き応援してください」とあいさつした。

 作品をクレーンでつり上げ、海に浮かべる「進水式」を実施。無事に船が浮かぶと大きな拍手が巻き起こった。今後は船舶検査を受け、実際に船として海上を航行させる予定。木崎さんは「現代の日本人は海と縁遠くなってしまった。作品をきっかけに、心理的にも身体的にも海を近くに感じ、海について考えてもらえれば」と話していた。

(四国新聞・2019/11/3掲載)


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