流れ着いた思い、4万通超える 粟島・漂流郵便局 手紙紹介書籍、22日に第2弾
亡き家族や、かつての恋人に宛てた届け先のない手紙やはがきを預かる「漂流郵便局」(香川県三豊市詫間町粟島)の郵便物が、4万通を超えた。22日には手紙を紹介する書籍の第2弾が発売される。局長を務める中田勝久さん(85)は「手紙はどれも心を込めて書かれている。本を手に取り、自宅でゆったりと人の思いを感じてほしい」と話している。
漂流郵便局は1964年に建てられた旧粟島郵便局を活用したアート作品。「瀬戸内国際芸術祭2013」の秋会期に合わせて現代美術家の久保田沙耶さんが手掛け、開局した。過去、現在、未来の誰かや何かに伝えたい思いをつづった手紙を局舎に展示し、来場者が自由に読むという仕組み。会期中から反響が大きく、終了後も引き続き展示を行っている。
手紙には、最後まで伝えられなかった親への感謝、子に先立たれたことへの自責の念、今は亡き配偶者への愛情、未来の自分への前向きなメッセージ、近しい人への憎しみなど、さまざまな心情がしたためられている。手紙は全国各地や海外から毎日届き、一日に200通を超えたこともあるという。2018年6月に計3万通を突破し、そこから2年足らずの今年3月26日に4万通に達した。4月16日時点で4万246通に上っている。
「『思いを預かる』という心構えで続けてきた。手紙を書いても本人の気持ちが全て収まりはしないだろうが、少し整理はつくのでは」と中田さん。開局からの6年半を振り返り、「多くの手紙が届く中で、漂流郵便局はどんどん成長してきたように感じる。大変なこともあったが、私はそれ以上のものをいただいている」と感謝を示す。
書籍化は15年に次いで2回目。今回は「漂流郵便局 お母さんへ」(162ページ、税別1200円)と題し、母親宛てや母親が子に宛てた約90通を収めた。手紙を書いた人物に思いを尋ねた「アナザーストーリー」も収録。末尾には漂流郵便局宛てのはがきが付いている。
普段は毎月第2、第4土曜に開局しているが、現在は新型コロナウイルスの感染予防のために中止している。中田さんは「状況が落ち着いたら訪ねてきてほしい。スマホの時代に、手間暇をかけて手紙を書いてみるのもいいものですよ」と笑みを見せる。
漂流郵便局に手紙を送りたい人は、郵便番号769-1108 三豊市詫間町粟島1317の2 漂流郵便局留めまで。
(四国新聞・2020/04/19掲載)
漂流郵便局
所在地 | 769-1108 香川県三豊市詫間町粟島1317-2 |
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