新型コロナウイルスの感染拡大を受け、リニューアルオープンを延期していた丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市浜町)が6月2日、約1カ月半遅れて開館することになった。予定していたリニューアル記念の企画展「猪熊弦一郎展 アートはバイタミン」も同日に開幕。美術館は心の病院、家の中で見るアートは心のビタミン剤のようなものと考えていた洋画家猪熊弦一郎(1902~93年)が身近な暮らしの中に作り出した美の在り方を紹介する。


旧猪熊邸の台所と居間を実物大に再現した展示=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館

旧猪熊邸の台所と居間を実物大に再現した展示=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館


 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は丸亀市ゆかりの猪熊の協力を得て、91年11月に開館した。建物の耐用年数を延ばす工事により、2018年12月から休館。4月18日の再開を予定していたが、新型コロナの影響を踏まえ見合わせていた。企画展は、当初6月28日までとしていた会期を延長する方向で検討している。

 休館明け初の企画展は、▽猪熊自身の暮らし▽プライベート空間への美の提供▽パブリックアート―の3部構成。再開に当たって初心に立ち返り、猪熊が考えたアートの役割を見つめ直す内容で、55点の作品や資料を展示する。

 猪熊の暮らしでは、東京・田園調布にある旧猪熊邸の台所と居間を実物大に再現し、猪熊が愛した家具や小物も並べる。旧猪熊邸はモダニズム建築で知られる建築家吉村順三の設計。旧知の猪熊の美意識や生活スタイルを熟慮して設計した住宅で、猪熊が大切にしていた美しい暮らしの形を垣間見ることができる。

 猪熊作品が人々の暮らしを彩る実例として、個人宅や企業の建物内に飾られている様子やエピソードなどを写真で紹介。猪熊がデザインした椅子やテーブルも展示する。

 公共空間に美を提供したパブリックアートでは、県庁東館ロビーの陶画「和敬清寂」やJR上野駅の壁画など4作品を取り上げた。和敬清寂は8面のうち3面を実物大で再現する。

 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は新型コロナ対策として、入館時にサーモグラフィーで検温を実施。マスク着用や手指の消毒などを求め、混雑時には入場制限を行う場合がある。会期中のイベントは中止する。

 古野華奈子学芸員は「身近な所にアートがあることが暮らしをより豊かにするという猪熊の考え方を伝えたい。新型コロナで大変な状況にある中、猪熊の考えを知ったり実践したりすることで、皆さんの心のビタミンになればと思う」と話している。

 開館時間は10:00~18:00。月曜休館。観覧料(常設展を含む)は一般950円、大学生650円、高校生以下と市在住の65歳以上は無料など。問い合わせは丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、電話0877-24-7755。

(四国新聞・2020/05/28掲載)


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館


所在地 香川県丸亀市浜町80-1
営業時間 10:00~18:00
定休日 月曜日
TEL 0877-24-7755
観覧料(常設展を含む) 一般950円、大学生650円
高校生以下と市在住の65歳以上は無料
ほか


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