秋の讃岐路を芸術で染める「かがわ文化芸術祭2020」(かがわ文化芸術祭実行委、香川県など主催)が1日、開幕した。2021年3月31日までの期間中、コンサートや美術展など多彩なイベントを展開。香川県高松市玉藻町の香川県立ミュージアムでは、インドの寺院に壁画を描いた高松市出身の日本画家・野生司香雪(のうすこうせつ)(1885~1973年)の展覧会が始まった。


インドの寺院に描かれた壁画の下図が展示されている野生司香雪展=香川県高松市玉藻町、香川県立ミュージアム

インドの寺院に描かれた壁画の下図が展示されている野生司香雪展=香川県高松市玉藻町、香川県立ミュージアム


 かがわ文化芸術祭は、香川県内の文化芸術活動を奨励しようと1958年に県芸術祭としてスタート。11月1日に三豊市詫間町のマリンウェーブで開かれる講演「ベートーベン音楽のすすめ」など実行委の主催事業や特別共催事業、県内の文化芸術団体が企画運営するイベントが開かれる。今年は、各イベントの主催者に新型コロナウイルス対策を十分に取ってもらうため、例年3カ月間の開催期間を7カ月間に延長した。

 香雪展は、野生司香雪画伯顕彰会が主催。香雪は檀紙村(現高松市檀紙町)出身で、インドに渡って仏教美術の原点を学んだ。インド北部サールナートにある初転法輪寺の壁画「釈尊一代記」は高さ4メートル、全長42メートルの大作で、32年から約5年かけて制作。現在、劣化した壁画の保全プロジェクトが顕彰会を中心に進められている。

 会場では壁画の原寸大の下図など約50点を展示。下図は、釈迦(しゃか)の誕生や悟りを開いて説法する姿、入滅の様子などが柔らかい筆遣いで描かれている。ほかに、香雪の代表作のびょうぶ絵や讃岐の風景を描いた日本画、県写真家協会の森川輝男会長(73)が昨年撮影した初転法輪寺やインドの人々の写真約70点も紹介している。壁画保全活動の現状を伝えるパネル展示もある。

 同展を訪れた高松市の美術作家新田とよ子さん(55)は「壁画のサイズ感や緻密さに圧倒される。郷土の画家がインドで制作したことに感動した」と見入っていた。

 この日は、インド大使館の首席公使らを招いたフォーラムも開かれた。香雪展は6日まで。

(四国新聞・2020/09/02掲載)

香川県立ミュージアム


所在地 香川県高松市玉藻町5番5号
開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜日(月曜日が休日の場合は翌火曜日)
TEL 087-822-0002


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