丸亀市出身の洋画家村上泰郎(やすお)(1902~73年)や多度津町出身の版画家武田三郎(1915~81年)の作品を通して、丸亀の主に1960年代から70年代にかけての風景を紹介する企画展「心のふるさと 丸亀の原風景」が丸亀城内の市立資料館(同市一番丁)で開かれている。丸亀城や商店街などの懐かしい情景を描いたスケッチや版画などが並んでおり、来館した市民らは古き良き古里に思いをはせている。会期は6日まで。


丸亀の懐かしい風景を描いたスケッチや版画などが並ぶ企画展=丸亀市一番丁、市立資料館


 村上は県立丸亀中(現丸亀高)を卒業後に上京し、洋画家藤島武二らに師事。東京美術学校(現東京芸大)で学んだ後に帰郷し、教員として美術教育に尽くすとともに、意欲的に創作活動を続けた。晩年には丸亀の街並みを描き、666枚のスケッチ画を残した。

 武田は法政大在学中に版画家の平塚運一や畦地梅太郎に師事。卒業後は地元で制作活動を続け、棟方志功が結成した日本板画院では四国支部長となるなど活躍した。丸亀では市の広報誌の表紙絵を74年から8年間にわたり担当した。

 企画展では村上の油彩画やはがき大の水彩のスケッチ画、武田の版画に加え、市内の切り絵作家寒川幹子さんが丸亀の四季を捉えた作品、60~70年代の街並みの写真など計約250点を展示。丸亀城や商店街、市の北部や東部などに分けて紹介している。

 丸亀城周辺のコーナーでは、武家屋敷が残るかつての城下町の風情、家族連れらに長く親しまれた城内の遊園地(2007年閉園)や動物園(09年閉園)などの作品が並ぶ。市中心部で今は姿を消した建物も多く描かれている。

 商店街を題材にした作品は、市民の活気あふれる夜店や歳末のにぎわいなどの情景を伝えている。交通の要衝の丸亀港やJR丸亀駅の周辺の光景は様変わり。郊外を描写した作品は、今のように宅地や道路の開発が進んでおらず、田園風景が広がっている。

 会場には年配の市民らの姿が多く、作品から心の中にある古里の記憶をたぐり寄せたり、思い出話に花を咲かせたりしている。丸亀市前塩屋町の男性(73)は「子どもの頃に遊んだり、よく出掛けたりした場所の絵があり、懐かしい記憶がよみがえった」と話した。

 無料。9:30から16:30まで。問い合わせは丸亀市立資料館、電話0877-22-5366。

(四国新聞・2020/09/01掲載)

丸亀市立資料館


所在地 香川県丸亀市一番丁(丸亀城内)
観覧時間 9:30~16:30
定休日 月曜日、祝日、年末年始
TEL 0877-22-5366


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