小豆島町出身の作家壺井栄(1899~1967年)の小説「二十四の瞳」の舞台になったとされる香川県小豆郡小豆島町田浦の岬の分教場に、全国から訪れた教師らがメッセージを寄せたボード全9枚が一堂に展示されている。「いつまでも目の前の子供達を愛し、幸せにできる教員でありますように」など、教え子と真摯(しんし)に向き合おうとする“決意表明”が観光客らの心を捉えている。


全国から訪れた教師らが記したメッセージに見入る観光客=香川県小豆郡小豆島町田浦、岬の分教場

全国から訪れた教師らが記したメッセージに見入る観光客=香川県小豆郡小豆島町田浦、岬の分教場


 岬の分教場は、1971年まで苗羽小学校田浦分校として使用されていた観光施設。54年公開の映画「二十四の瞳」(木下恵介監督)のロケが行われたことで観光名所として脚光を浴びるようになった。高峰秀子さん演じる大石先生と12人の教え子たちの交流が全国の教師らの共感を呼び、現在も多くの教育関係者が訪れている。

 教師らにメッセージを書き込んでもらうボードを設置したのは、2013年に岬の分教場で開いた「教育シンポジウム」がきっかけ。高峰さんの夫で脚本家・映画監督の松山善三さんと、夫妻の養女で文筆家の斎藤明美さん、島内外の教育関係者ら参加者に、教育にかける思いや「二十四の瞳」の感想を縦1・2メートル、横1・8メートルの白い板に書いてもらったのが第1弾となった。

 ボードは現在9枚目。これまでは直近の2枚を掲示していたが、今回初めて保管していたものも含めて全ボードを並べた。

 各ボードには、「将来の日本を担う子どもたちを育てる尊い仕事につけたことに感謝」「あきらめず、一生懸命!」など教員らの熱い思いがびっしり。斎藤さんの「生まれてきてよかった。そう思える瞬間が、きっとあなたの人生にもある」との言葉も残っている。元県教育長の細松英正さんは「岬の分教場はいつまでも残したい日本の教育遺産です。ここで何かを感じとってもらいたい」とのメッセージを記している。

 群馬県藤岡市から友人と訪れた会社員長瀬明子さんは「先生だけあって、どの文章も表現がうまくて引き込まれる。書いた当時の気持ちが反映されていて、読んでいると心が温かくなる」と話していた。

 メッセージボードの展示は来年11月17日まで。岬の分教場の入場料は中学生以上240円、小学生120円。問い合わせは二十四の瞳映画村、電話0879-82-2455。

(四国新聞・2020/12/10掲載)


二十四の瞳映画村

岬の分教場


所在地 香川県小豆郡小豆島町田浦甲977-1
営業時間 9:00~17:00
入場料 中学生以上240円、小学生120円
TEL 0879-82-2455(二十四の瞳映画村)


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