安藤忠雄さん設計の地中美術館など名建築がそろう直島町。直島の建築を語る上で欠かせないのが、直島小・中学校や町役場など町内の公共建築を数多く手掛けた建築家の石井和紘さん(1944~2015年)の存在。石井さんは「アートの島」であり「建築の島」でもある直島の礎をつくった一人とも言える。今回は直島文化村と福武財団が主催する直島建築ツアーに参加し、町内の公共建築を巡った。


背後にある地蔵山を意識して設計された直島小。中央に見える時計の辺りは図書室=直島町本村

背後にある地蔵山を意識して設計された直島小。中央に見える時計の辺りは図書室=直島町本村


 まずは、文教地区にある直島小へ。小学校は1970年に完成。設計時、石井さんは何とまだ20代だった。当時石井さんは東大の吉武泰水研究室に所属しており、東大紛争の混乱の中、若くして設計を任された。

 小学校は背後にある地蔵山の大きさを強調するようなデザイン。中央に時計がある部分は図書室になっていて、らせん階段を上った先にある。校舎内1階にある体育館はもともとは入り口に扉がなかったそうで、これは児童が体育館を自由に使えるようにとの思いからだという。

 隣にある中学校へは、曲がりくねった道を歩いてたどり着く。アールになった窓や30度ずつ角度を付けた部屋など画一的ではないつくりになっていて面白い。

 町役場は、家プロジェクトのエリアに近いものの、通り過ぎてしまいがち。だが、立ち止まって見てみれば、変わった建物だということは一目瞭然だ。


コロシアムのような珍しい形をした議場=直島町役場

コロシアムのような珍しい形をした議場=直島町役場


 この建物は京都・西本願寺の披雲閣や旧歌舞伎座など数々の名建築からの引用を多用している。窓の形も丸やハートのような形などさまざまで、遊び心たっぷり。一方で、住民が訪れる1階部分は大きく弧を描くような設計になっている。住民にとって親しみやすく入りやすい役場を目指したのだという。


「町政を考える望楼」からの眺めは爽快=直島町役場

「町政を考える望楼」からの眺めは爽快=直島町役場


 このツアーでは、日頃は立ち入れない場所も案内。コロシアムのように円形をした議場や最上階にある「町政を考える望楼」と呼ばれる部屋は必見だ。望楼は、知る人ぞ知る空間。向島や観光客でにぎわう本村地区が一望でき、三分一博志さんが設計した直島ホールの屋根もよく観察できる。

(四国新聞・2019/05/21掲載)


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