画伯の半世紀たどる 東山魁夷せとうち美術館 日本画8点同時公開
香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で、所蔵する魁夷(1908~99年)の日本画作品全8点を公開する展示会が開かれている。魁夷が風景画家として歩む決意を固めた時期から90歳で逝去する前年まで半世紀にわたる作品が並び、来館者は画風の変遷などを感じながら作品に見入っている。24日まで(12、18日は休館)。
東山魁夷せとうち美術館がこの8作品を一堂に展示するのは初めて。開館15周年を記念して企画した。
会場では制作年代順に展示。このうち「月宵(げっしょう)」(制作1948年)は、太平洋戦争の召集を受けて死を意識した体験などを経て、山梨県旧落合村の田畑を描いており、東山魁夷せとうち美術館学芸員は「再び絵筆を取れる喜びと、再出発の思いが込められている」と解説する。
日本画家としての地位確立後の「松庭(しょうてい)」(制作56年)は、原色や単純化した構図が特徴で、松の生命力とともに新しい画風に挑戦する気概が感じられる。「この頃から生の喜びとでもいうものが加わり、何か鳴り響くもの、力強いもの、重厚なものを欲求する方向に向かってゆく」という魁夷の言葉も紹介している。
最後の日展出品作となった「月光」(制作98年)は山形市の蔵王のスキー場が舞台。月自体は作中に登場しないものの樹氷や雪原が柔らかな光を浴び、冬の夜の静けさが印象深い。
館内では、10年の歳月をかけて制作し、81年に唐招提寺(奈良市)に奉納した障壁画を縮小再現した版画や下図も展示している。
(四国新聞・2021/01/12掲載)
第3期テーマ作品展
所在地 | 香川県坂出市沙弥島224-1 |
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開催期間 | 11/12(木曜日)~1/24(日曜日) |
開館時間 | 9:00~17:00まで(入場は16:30まで) |
入館料 | 一般310円ほか |
休館日 | 月曜日(休日の場合は開館、翌日火曜日が休館) |
TEL | 0877-44-1333 |