香川県高松市出身の美術作家で、「鎧(よろい)と人間」をテーマに制作活動を展開している野口哲哉(40)の作品展が、2月6日から香川県高松市紺屋町の高松市美術館で開かれる。「THIS IS NOT A SAMURAI」と銘打ち、鎧と兜(かぶと)を身に着けた武者姿の人物彫刻や絵画で人間の普遍的な姿を描き出す。近年、国際的に注目を集める野口の最大規模の個展となる。3月21日まで。

 野口は、高松工芸高を経て広島市立大で油彩画を専攻。一方で少年時代から鎧や兜に興味を持ち、独学で武者の知識を深めたという。鎧姿の武者がスマートフォンをのぞき込んでいる様子など過去と現代のモチーフを組み合わせた独特の世界観で広く話題を集めており、フランスの高級ブランド「シャネル」とコラボレーションした作品も発表している。


武者がスマートフォンを見ている様子を描いた「21st Century Light Series~The Tap~」(2020年 アクリル・ボード、9・2センチ×13・8センチ)

武者がスマートフォンを見ている様子を描いた「21st Century Light Series~The Tap~」(2020年 アクリル・ボード、9・2センチ×13・8センチ)


 今展では、樹脂で制作した武者彫刻などの立体約110点をはじめ、油彩画やアクリル画などの平面約70点を紹介。このうち「WOODEN HORSE」(2020年)は、現代の木馬の遊具にまたがる鎧兜姿の武者を表現したユニークなミクストメディア。白髪交じりの口ひげやへの字形の口元など、哀愁が漂う表情を緻密に彫り込んでいる。


武者が木馬にまたがっている彫刻「WOODEN HORSE」(2020年 ミクストメディア、高さ22.0センチ)

武者が木馬にまたがっている彫刻「WOODEN HORSE」(2020年 ミクストメディア、高さ22.0センチ)


 光をテーマにしたアクリル画の連作はレンブラントら西洋の古典画家に着想を得ており、武者が手に持って操作するスマートフォンの光で武者自身の鎧や兜が暗闇に浮かび上がるさまがユーモラスだ。

 ちょんまげに紋付き羽織の男性がマスクを着用している姿を描くアクリル画「FACE MASK」(20年)など、コロナ禍の中で制作した作品も並ぶ。

 野口は「個展のタイトルには、侍や武将というレッテルを貼らずに人間を見たいという願いを込めた」と思いを語っている。

 高松市を皮切りに山口、館林(群馬)、刈谷(愛知)の4会場を巡る巡回展。計画では20年7月に開幕する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となっていた。

 入場料は一般1000円ほか。問い合わせは高松市美術館、電話087-823-1711。

(四国新聞・2021/01/28掲載)


高松市美術館「野口哲哉展 ―THIS IS NOT A SAMURAI」

野口哲哉展 ―THIS IS NOT A SAMURAI


会場 高松市美術館(香川県高松市紺屋町10-4)
開催日時 2021/2/6(土)~3/21(日)
9:30~17:00(入室は閉館30分前まで)
※金曜日・土曜日は19:00閉館
観覧料 一般/1000円、大学生/500円ほか
※高校生以下は無料
※65歳以上も一般料金
休館日 月曜日
TEL 087-823-1711(高松市美術館)


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