香川県さぬき市多和の「天体望遠鏡博物館」が12日で開館5周年を迎えた。各地の天文台や個人から寄贈を受けた貴重な天体望遠鏡を保管、運用する全国的にも珍しい施設。宇宙の神秘に迫ろうと工夫を重ねた望遠鏡の性能を知り、その情熱を感じようと節目を迎える日を前に同館を訪ねた。


校舎北側の駐車場から南東の空を撮影。星空と桜の競演が趣深い=写真はいずれもさぬき市多和、天体望遠鏡博物館


 この日は来館受付を済ませてから、スタッフの案内で施設内を巡るツアーに参加してみた。プールを改築した出発地点の大型望遠鏡展示棟には、大人の身長を優に超える望遠鏡がずらり。1890年前後に製造され、英国のアマチュア天文学者が月面観測に使用した「カルバー46センチ反射望遠鏡」など、歴史を感じさせる機材もある。スタッフから望遠鏡の仕組みやエピソードを聞いていると、知的好奇心がくすぐられる。

 続いて大型望遠鏡観測室へ。ここは天井が可動式になっており、晴れていれば太陽の黒点やフレアを観測できるそうだ。訪問した日はあいにくの曇り空だったため、再挑戦を誓って別の部屋に移動した。

 施設には小型天体望遠鏡をテーマごとに紹介する四つの展示室や、宇宙や望遠鏡に関する書籍を集めた図書室もある。展示室で見かけたアマチュア天文家・百武裕司さん(1950~2002年)の双眼鏡は塗装がところどころ剥げかかっていた。百武さんは彗星(すいせい)の発見に情熱を注いだそうで、その利用ぶりがうかがえた。


校舎内の展示室には小型の天体望遠鏡がずらり


 廊下には天体望遠鏡博物館スタッフが撮影した220万光年の距離にある銀河や星雲の写真に加え、旧多和小の卒業生が制作した版画や掲示物が残っているのも趣深い。最後は屋外ドームに移動し、肉眼の8千倍の光を集められる望遠鏡を間近に見てツアー終了。ノスタルジックな雰囲気の中で宇宙の神秘の一端に触れる貴重な機会になった。

 月に1度の夜間観望会では、季節の星座や天体ショーを観測することができる。施設の南にある護摩山にはアクリル板を使った写真パネルを設置しており、雨天時には望遠鏡でそのアクリル板をのぞくことで土星観測が楽しめるそうだ。

 敷地内には産直市やどぶろく工房を擁する「結願(けちがん)の郷(さと)」も。天体望遠鏡博物館の見学後は、多和の恵みを堪能するのもいいかも。

 開館は土、日曜と祝日(ただし月、金曜に限る)。開館時間は10:00から16:00まで。案内ツアーは一日に計5回実施。入館料は一般500円ほか。

(四国新聞・2021/03/13掲載)


天体望遠鏡博物館

天体望遠鏡博物館


所在地 香川県さぬき市多和助光東30-1
(旧 多和小学校)
開館日 土曜日、日曜日と祝日(ただし月曜日、金曜日に限る)
開館時間 10:00~16:00
TEL 0879-49-1772


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