過ごしやすい季節になり、のんびりと散策に出掛けたいと思う日が多くなってきた。でも今は、新型コロナウイルス感染拡大のため、人が多い場所は控え、屋外でリフレッシュを楽しみたい。そこで今回は、眼下に海が広がる景観や花木、悠久の歴史を満喫できる香川県高松市のシンボル・屋島を車で訪ねた。


屋島最北端にある長崎ノ鼻。瀬戸内海の島々を見渡すことができる

屋島最北端にある長崎ノ鼻。瀬戸内海の島々を見渡すことができる


 まずは、屋島の外周をぐるりと囲む県道150号から脇道にそれ、最北端の「長崎ノ鼻」を目指した。対向車とすれ違うのが難しそうな細い砂利道を進むと、数分で開けた場所に出た。そこに車を止めて、階段を100段ほど下りると海に突き出た長崎ノ鼻だ。

 長崎ノ鼻は幕末、黒船来航を機に砲台が築かれたという物々しい歴史がある場所だが、今はその面影はない。遠く浮かぶ女木島や大島、沖合を行き交うフェリーをのんびり眺めていると時間を忘れそうになる。

 長崎ノ鼻への細道から県道に戻ると、目の前に屋島北嶺に続く登山道への案内板があった。展望台「遊鶴亭(ゆうかくてい)」までは坂道を約800メートル上るそうだ。体力に自信がある人は、野鳥の鳴き声を聞きながら歩を進めるのも良さそうだ。今回はそのまま車で外周を進み、屋島スカイウェイへ向かった。


屋島神社の境内から南嶺を見上げる。周辺に咲き誇るキリシマツツジの群生が美しい

屋島神社の境内から南嶺を見上げる。周辺に咲き誇るキリシマツツジの群生が美しい


 麓から南嶺を結ぶ屋島スカイウェイを走り、高松松平家とゆかりの深い徳川家康をまつる屋島神社を参拝した。長い石段を上った先、神門付近の玉垣には名物のキリシマツツジが咲き乱れている。赤やピンク、オレンジの色鮮やかさと、花越しに眺める南嶺の美しさに目を奪われた。

 再び車に乗って、上りと下りが分からなくなる県民におなじみのミステリーゾーンを通り過ぎ、屋上観光駐車場に着いたのは午後3時ごろ。四国霊場84番札所・屋島寺やビューポイントの獅子(しし)の霊巌(れいがん)をじっくりと散策。周囲に人がいないのを確かめてマスクを外し、深呼吸すると気分は爽快だ。

 獅子の霊巌では、2021年度の完成を目指して交流拠点施設が建設中。現在は基礎工事が終わり、床の鉄筋を配置する作業が進んでいるところだそう。開業する頃にはコロナの状況が変わり、香川県内外から訪れた人たちとにぎやかで楽しいひとときが過ごせるかもしれない。そんなことを考えながら、屋島を後にした。

(四国新聞・2021/04/24掲載)

長崎ノ鼻


屋島神社


獅子の霊巌



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