瀬戸内海の島々で撮影を続けている土庄町のアマチュアカメラマン・太田昭生さん(71)が、土庄町の豊島で30年間にわたって定点観測した写真を集めた個展「豊島30年 産廃からアートへ」が11日、香川県高松市番町の県文化会館で始まった。産廃問題に揺れ、近年は瀬戸内国際芸術祭の会場として国内外の人々が訪れるなど変貌を遂げる豊島の歴史を独自の視点で切り取っている。16日まで。


「島の将来を考えるきっかけになってくれたら」と話す太田昭生さん=高松市番町、県文化会館


 太田さんは、瀬戸の島々の歴史を後世に伝えようと写真撮影で定点観測を始めた。豊島は、産廃の不法投棄が摘発される前で県立高校の教諭だった1990年8月に撮影をスタート。多いときで年間50回ほど訪問したという。今展では30年間で撮りためた中から約200点を選出。同じ場所ながら90年、2000年、20年の年代別に捉えた3枚一組か、2枚一組の展示方法で変化の様子を伝えている。

 このうち、産廃処分地で撮影した写真からは、かつて廃車や鉄材が山積していた場所にやがて低木が生い茂り、穏やかな海辺の景観に戻るまでの経過が見て取れる。唐櫃地区の組み写真では、90年に自宅の外で年配の男性が読書をしてくつろぐ場面と、20年後に住民が不在になり、瀬戸芸2010の作品で空き家を利用した「島キッチン」に生まれ変わった姿を対比するように紹介している。

 このほか、島内2地区で30年間続く秋祭りを撮影した作品や、バブル期に整備されたプライベートビーチが徐々に朽ちていくさまも記録している。

 太田さんは「豊島のアルバムのような個展と位置付けている。今展が島の将来を考えるきっかけになってくれたら」と話している。

(四国新聞・2021/05/12掲載)


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