きょうは「雷記念日」。平安時代の930(延長8)年旧暦6月26日、平安京の清涼殿に雷が落ち、多くの貴族が犠牲になった天災が由来だ。当時の人々はこの落雷を左遷先の太宰府(福岡県)で不慮の死を遂げた菅原道真(845~903年)が怨霊となって起こしたと考え、道真を雷神と結び付けて祭ったそう。今回は雷記念日にちなみ、道真ゆかりの滝宮天満宮(綾川町滝宮)とその周辺を散策した。


滝宮天満宮の拝殿。向かって右側の梅が「飛び梅」


 道真は886年、国司として讃岐にやってきた。4年間の任期中、道真が過ごした官舎跡に建てられたと伝わるのが同天満宮だ。参門をくぐると、参道の両側にずらりと並んだ梅の木が出迎えてくれた。

 道真が梅をこよなく愛したことから、境内には白梅や紅梅など計約150本が植えられているそうで、訪ねた日は枝いっぱいに茂った葉が青空に映えていた。中には薄赤く色づいた実がいくつも生(な)っている木もあり、花の時期とは異なる力強い趣が感じられた。境内の梅の実は収穫後土用干しされ、正月などの参拝記念にいただく「福梅」になるという。


滝宮天満宮境内の梅。収穫された実は「福梅」として参拝者に配られる


 拝殿の両側には、赤い柵に囲まれた白梅が1本ずつ立っている。このうち向かって右側は太宰府天満宮から移植した「飛び梅」。左側は香川に昔から生えているという讃岐の梅で、讃岐の梅は道真の縁で太宰府天満宮にも移植されているそう。道真は学者の家系に生まれ、自身も優秀な学者だったため、後に学問の神としても崇敬されるようになった。そんな道真に思いをはせながら参拝を済ませ、滝宮天満宮を後にした。

 滝宮天満宮から西に歩いて数分、綾川沿いにある滝宮公園を訪れた。「さぬき百景」にも選ばれた桜の名所として名高いが、同時にヘラブナやブラックバスを狙う釣り人の人気スポットでもある。この日も数人が釣りざおを握り、魚との真剣勝負を楽しんでいた。公園の南側にはアーチ橋の滝宮橋が、北側には朱色の滝川橋が架かり、どちらの風景も味わい深い。橋のたもとから見上げると重厚な造りが圧巻だ。

 締めくくりは、3月末にリニューアルオープンした道の駅滝宮に向かった。セルフうどん店や新鮮な野菜、果物を販売する産直などが集まる複合施設で、うどん店では道真にちなんだ町木の梅を麺に練り込んだ「梅うどん」が食べられる。

 構内をぐるりと回っていると、県産米の量り売りをしているコーナーが目にとまった。綾川町は古くから米どころとして知られ、1914(大正3)年には大正天皇の大嘗祭(だいじょうさい)に奉納する新穀を育てる「主基斎田(すきさいでん)」にも選ばれている。かつて清涼殿に落ちた雷は道真の怒りとして恐れられた。一方、雷の稲妻は稲を実らせるという言い伝えもあるそうだ。雷神とも称される道真ゆかりの地が県内有数の米どころという不思議な縁を感じながら、散策を終えた。

(四国新聞・2021/06/26掲載)




関連情報