いずれも漆芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)で、彫漆(ちょうしつ)の音丸耕堂=香川県高松市出身=と蒟醤(きんま)の磯井如真=香川県高松市出身=の作品計2点が、個人所蔵家から香川県高松市番町の香川県漆芸研究所に寄贈された。県漆芸研究所は「いずれも香川漆芸の歴史上、重要な作品。研究所の授業で活用するとともに、多くの人がその魅力に触れられるようにしたい」としている。

 寄贈されたのは、耕堂の「彫漆色紙筥(しきしばこ) 昆虫譜(こんちゅうふ)」(1938年)と、如真の「蒟醤 喰籠(じきろう) 遊禽之図(ゆうきんのず)」(1958年)。

 香川県美術コーディネーターの住谷晃一郎さんによると、耕堂の「彫漆色紙筥 昆虫譜」は、戦前の新文展で特選候補に選ばれた作品。チョウやトンボなどの昆虫が陰影を付けた色彩で表現されている。それまで色漆は5色に限られていたが、当時開発された白漆を取り入れることで中間色が出せるようになり、色彩の幅を飛躍的に広げた作品に挙げられる。


音丸耕堂の「彫漆色紙筥 昆虫譜」縦31・0㌢、横27・5㌢、高さ6㌢(撮影 高橋章)


 如真の「蒟醤 喰籠 遊禽之図」は、1958年に如真が宮内庁へ納めた作品の代替品として制作。丸みのある素地に線彫り蒟醤で飛び立つ鳳凰(ほうおう)と草花文をあしらっており、曲面への緻密な描写から如真の高い技術力がうかがえる。


磯井如真の「蒟醤 食籠 遊禽之図」直径12・5㌢、高さ13・6㌢(撮影 高橋章)


 耕堂の色紙筥は、丸亀市の所蔵家の遺族から5月に、如真の喰籠は、高松市の所蔵家の遺族から6月に寄贈された。

 この2点は、香川県文化会館1階香川漆芸ホール(香川県高松市番町)に今月新たに開設された「人間国宝コーナー」の第1弾として8月29日まで展示される予定。人間国宝コーナーでは、漆芸研究所が所蔵する香川漆芸の人間国宝6人の作品約40点を随時展示する。観覧無料。

(四国新聞・2021/07/29 掲載)

「人間国宝コーナー」第一弾


所在地 香川県高松市番町1-10-39(香川県漆芸研究所)
開催期間 2021/7/16(金曜日)~2021/8/29(日曜日)
観覧料 無料
TEL 087-831-1814


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