「日本の航空機の父」と呼ばれる二宮忠八(1866~1936年)は、丸亀歩兵第12連隊の野外演習で訪れた仲南町(現香川県仲多度郡まんのう町)の樅(もみ)の木峠で世界に先駆けて飛行原理を思い付き、有人飛行を志したとされる。同所には足跡を紹介する「二宮忠八飛行館」がある。今年で開館15周年を迎えた飛行館を訪ね、県ゆかりの偉人に思いをはせた。


二宮忠八が発明した「玉虫型飛行器」の実物大模型などが並ぶ(香川県仲多度郡まんのう町)


 飛行館へは高松市街地から国道32号を三豊市財田町方面に車で約1時間。小型飛行機が目印の道の駅「空の夢もみの木パーク」に隣接している。

 同館の解説パネルなどによると、幼少期から竹とんぼや凧(たこ)に関心があった忠八は1889(明治22)年、野外演習中に通りがかった樅の木峠でカラスの滑空を見て「空気抵抗を利用すれば常に羽ばたかなくても空を飛べる」と飛行原理を思い付き、91年に「カラス型模型飛行器」の飛行実験を成功させた。

 ただ、忠八の研究は周囲の理解を得られず、12年後に米国のライト兄弟が成し遂げた有人飛行が世界初に。忠八の功績は大正時代になってやっと国内で評価を受け、死後の1964(昭和39)年には英国王室航空協会に「ライト兄弟よりも早く飛行原理を発見した」と認められた。

 飛行館では、忠八の足跡を資料約30点で紹介。考案した機体の模型や自筆の書、交流があった仲南町の小学校長との手紙などが並んでいる。中でもカラス型―の次に完成させた人力飛行機「玉虫型飛行器」の実物大模型は迫力満点。翼長は約8メートル。飛行館のシンボルとして、天井からつり下げられている。

 館内にはミニゲームコーナーもあり、忠八の生涯にちなんだクイズや飛行機の操縦が楽しめる。いずれも終了後は写真付きの「認定書」がもらえるので、親子で挑戦してみよう。

 また、県内の航空機愛好家が製作した飛行機模型なども併せて展示。館内を回ると、忠八と同じように空への憧れを抱く人々の熱量の一端が感じ取れた。


二宮忠八の銅像が目を引く二宮飛行神社(香川県仲多度郡まんのう町)


 飛行館の近くには忠八の銅像が目を引く「二宮飛行神社」がある。忠八は晩年、京都府の自宅に「飛行神社」を建立し、相次ぐ飛行機事故の犠牲者を弔ったという。同館の馬場静雄館長によれば二宮飛行神社は国内唯一の分社だそうで、11月から御朱印の授与を始める予定。御朱印はカラスをあしらったオリジナルデザインだそうだ。

(四国新聞・2021/10/23掲載)


二宮忠八飛行館

二宮忠八飛行館


所在地 〒769-0319 香川県仲多度郡まんのう町追上358-1
開館時間 10:00~16:00
休館日 水曜日、木曜日/ 12月29日~1月6日
TEL 0877-75-2000

二宮飛行神社



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