香川県三豊市出身で日本芸術院会員の日本画家岩倉壽(ひさし)さん(1936~2018年)の特別展「自然を掬(すく)う」が、坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で開かれている。自然と向き合い、山や沼などの内包するエネルギー、美しさを淡いタッチで描いた大作が並び、来館者は日本らしい風景の空気感や臨場感に見入っている。7日まで。


日展内閣総理大臣賞の「晩夏」に見入る来館者=香川県坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館


 岩倉さんは三豊郡神田村(現・三豊市山本町)生まれ、観音寺一高卒。京都市立美術大(現・京都市立芸術大)に進んだ後、画塾「晨鳥社(しんちょうしゃ)」に入り、京都画壇の重鎮だった山口華楊に師事。日本画家東山魁夷(1908~99年)らの後に続く世代として日展に出品を続けた。2006年に日本芸術院会員となった。

 県出身で現代日本画を代表する作家の約60年にわたる画業を知ってもらおうと同館が企画。本画16点をはじめ、下絵やスケッチ、岩倉さんが表紙絵を担当した観音寺一高の同窓会誌「巨鼇(きょごう)」を展示している。

 1977年制作の「荒地野」は岩絵の具を塗って乾かす工程を繰り返し、自然をありのままに表現。日展会員賞に選ばれた「沼」は光に満ちた「モネの睡蓮(すいれん)」とは対照的に、どんよりとした天候の日本的な沼を捉えており、多様な生物が息づく水中の様子などが想像させられる。

 日展内閣総理大臣賞の「晩夏」は、フランスの山上にある白色の城が青空に映える様子を描き、爽快な印象を与えている。


岩倉さんが表紙絵を担当した観音寺一高の同窓会誌「巨鼇」


「巨鼇」は、岩倉さんが表紙絵を担当した1998年から2016年までのうち16年分を展示しており、郷土愛や作風の変遷を感じることができる。

 同館の担当者は「日常の中にあるささやかな自然に目を向けるきっかけにしてもらえれば」と話した。

(四国新聞・2021/11/02掲載)

東山魁夷せとうち美術館


所在地 香川県坂出市沙弥島224-13
開館時間  9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日(休日の場合は開館、翌日火曜日が休館)
TEL 0877-44-1333


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