香川県三豊市詫間町の粟島に彫刻家の流政之さん(1923~2018年)の代表作「サキモリ」が設置され、24日に関係者が出席して除幕式が行われた。高松市を制作拠点に世界的に活躍した流さんは、自身の戦争体験から三豊市詫間町にあった詫間海軍航空隊に強い思い入れを持ち、詫間海軍航空隊滑走台近くに作品を置くことを希望していたとされる。流さんの遺志を継ぎ、作品の保存、公開を進める流財団(香川県高松市)が三豊市に永久貸与することで合意した。


流さんの彫刻作品「サキモリ」を除幕し、設置を祝う関係者=三豊市詫間町、市粟島海洋記念公園


 2011年制作のサキモリは御影石製で、台座を含む大きさは高さ234センチ、幅と奥行き各65センチ。抽象的な人の形をしていて中心に穴が開いており、流さんは「人間の内臓、腐敗する部分を取り除き、精神だけで立つ人体のカタチ」と造形の意図を語っていたという。

 これまで置いていた高松市庵治町の「ナガレスタジオ 流政之美術館」から、詫間海軍航空隊跡地を対岸に見渡せる三豊市粟島海洋記念公園に移設。流さんの造形世界を通して、詫間海軍航空隊の存在を訪れた人に継承したいとの願いを込めた。

 ゼロ戦パイロットとして終戦を迎えた流さんは、神風特攻隊の出撃の地でもあった詫間海軍航空隊跡地を80代に訪れて強い思いを寄せるようになり、スナップ写真を持ち歩くほどだったという。

 除幕式には山下市長、流財団の香美佐知子代表理事、台座の整備などに協力した観音寺信用金庫(香川県観音寺市)の須田雅夫理事長らが出席。香美代表理事は「歴史を背負った三豊市のお守りのような存在として、サキモリがここに立っていてくれたら」とあいさつした。

 この日、環境学習に粟島を訪れた詫間小学校(真鍋佳樹校長)の6年生72人も式に参加し、流さんの業績や作品について学習してきた成果を三つのクラスごとに発表。流さんがサキモリに込めた平和への思いに想像を巡らせ、「古里の詫間町、粟島にまた一つ自慢できることが増えた。たくさんの方々に来ていただきたい」と話した。

(四国新聞・2021/11/25掲載)



関連情報