香川漆芸の蒟醤(きんま)の第一人者として知られる香川県高松市の漆芸家太田加津子(87)の個展「華麗なる蒟醤の世界」が、同市番町の香川県文化会館で開かれている。伝統の彫りを磨き抜き、モチーフを生き生きと表現した28点を紹介。気品あふれる作品空間から約70年にわたる漆芸人生を一望できる。27日まで。


気品あふれる作品が並ぶ太田加津子展=香川県高松市番町、県文化会館


 太田は10代で讃岐漆芸の中興の祖・故磯井如真に師事。蒟醤の伝統的な技術を忠実に受け継いだ上で、独自の作風を確立している。日本伝統工芸展を中心に入賞を重ねたほか、同展鑑査員や県展審査員を歴任。2001年には香川県無形文化財保持者に認定された。

 十数年ぶりの個展となる本展では、初期から近年までの代表作を展示。このうち「籃胎(らんたい)蒟醤 盛器 草花文(そうかもん)」は、グラジオラスのような植物を伝統的な黒と朱色のコントラストであしらった作品。中心から渦状に広がるように彫られ、生命力あふれる描写に引き込まれる。


「籃胎蒟醤 盛器 波文」


 水の流れを題材にした「籃胎蒟醤 盛器 波文(なみもん)」は、伸びやかな線彫りの上から繊細な点彫りを加えることで波の動きを柔らかく表現。器を覆う鮮やかな藍色が爽やかな印象を与えている。また、人間国宝コーナーでは、如真と夫の故太田儔の代表作品も併せて紹介している。

 入場無料。16日13:30からは蒟醤の人間国宝で太田儔に師事した大谷早人によるギャラリートークがある。問い合わせは香川県漆芸研究所、電話087-831-1814。

(四国新聞・2022/02/10掲載)



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