まちなかの山本忠司建築(高松市内)町並みになじんだ建物たち 民芸館や喫茶店 デザイン多様に
瀬戸内海歴史民俗資料館のほか、高松西高や屋島陸上競技場(現存せず)など数多くの公共建築を手掛けた建築家の山本忠司さん(1923~98年)。山本さんが設計した建物は高松市中心部にもあり、公共建築だけでなく、喫茶店や郷土料理店といった店舗も。町歩きがてら、高松の町並みになじんだ建物を巡ってみた。
栗林公園には行ったことがあるが、讃岐民芸館には入ったことがない―という県民は、意外と多いのでは。園内の讃岐民芸館は商工奨励館の蔵を改修して65年に開館。旧栗林公園観光事務所を新民芸館に、レストハウスを瓦館に改修した。それぞれの建物はばらばらの時代に建てられているが、石や瓦、木といった素材を使い、統一感を持たせている。
瓦館の壁画は、山本さんが手掛けた旧県農業試験場展示館(高松市仏生山町、現存せず)の壁画を思わせる。ここでは瓦を使った椅子も必見。椅子の上には円座が敷いてあって、座り心地も抜群だ。歩き疲れたときは、瓦館で休むのもおすすめ。
栗林公園から徒歩約15分。郷土料理店「まいまい亭」(同市東田町)は、外から見ると日本風の家屋に見えるが、中に入るとコンクリート造りの建物であることがよく分かる。しかし、家具や食器の温かい雰囲気があり、コンクリートの硬い印象は感じない。
市美術館前に立つ喫茶店「城の眼(め)」(同市紺屋町)は創業57年の老舗。建物正面のコンクリート板のデザインは、映画「ウエスト・サイド物語」に登場するニューヨーク街のグラフィックからヒントを得たという。独特な外観に足を止める人も多い。
店に入ると、重厚な石の壁が目に飛び込んでくる。これは64年のニューヨーク世界博覧会日本館の試作として作られたもの。店舗入り口には石のスピーカーもある。山本さん自身は、店内を見渡せる入り口付近の席によく座っていたとか。同じ席に座り、コーヒーを飲んでゆったり過ごしてみよう。
(四国新聞・2019/04/09掲載)