今回訪ねたのは香川県三豊市の宗吉瓦窯(がよう)跡史跡公園。瓦を製造した1300年前の窯の跡で、200キロ以上も離れた藤原宮跡(奈良県橿原市)からも製品が出土しているという。地元の小学校では校外学習の定番になっている史跡と聞き、気軽な気持ちで出掛けた。

 瓦窯の本格的な調査が行われたのは1990~2004年。史跡を復元整備し、09年に資料館も備えた公園としてオープンした。以来さまざまなイベントを行い、にぎわいの場所として愛されている。

 まずは「宗吉かわらの里展示館」へ。ホールでは、瓦窯の歴史をまとめたVTRが流れている。それによると、瓦窯が作られたのは大化の改新(645年)のころ。四国で最も古い仏教寺院とされる妙音寺(同市豊中町)や宝幢(ほうどう)寺(丸亀市)、遠くは奈良の藤原宮跡にも、ここで焼いた瓦が使われたという。


パネル展示や瓦の製造方法の模型など工夫された展示

パネル展示や瓦の製造方法の模型など工夫された展示。古代寺院跡から出土した瓦の実物は、細かいところまでしっかり見たい


 なぜそんなことが分かるのか―。それは史料の展示を見に行くと納得できる。ここから出た軒丸瓦と、藤原宮から出土した瓦の実物が並べてあるが、同じところにかすかな傷がある。これは型の傷が粘土に写し取られたためで、この二つがいわば「兄弟」という、まさに動かぬ証拠だ。


屋根の下が復元された16号窯

屋根の下が復元された16号窯。芝生の斜面にも他の窯跡が表現されている。上って高さを確かめて


 次は外の復元窯を見学に。斜面の真ん中、屋根が掛かった16号窯は、全24基のうち状態が最もよかったため、大きさから形、色、壊れ具合まで実物通りに復元したそうだ。観覧台の上から見下ろすと、足がすくむほど高いが、これでもコンパクト型。最大の17号窯は上部からの長さが13メートルもあり、研究者を驚かせたという。今は他の窯跡は植栽で表現されている。

 北部の詫間方面を見渡すと、かつてはすぐ近くまで海が入り込んでいたと想像できる地形になっている。製品を出荷するのに便利な、いわば臨海工業地帯だったわけだ。窯からさかんに煙が立ち上り、土やまきを担いだ工人たちが忙しく行き来していた様子が目に浮かんだ。

 資料館では勾玉(まがたま)作りや粘土工作など、大人も子どもも楽しめる体験メニューを用意している(要予約)。歴史ロマンに思いをはせるのはもちろん、もの作りの奥深さを感じてもよし、屋外で遊んでもよしの公園だ。

(四国新聞・2022/04/09掲載)


宗吉かわらの里展示館

宗吉かわらの里展示館


所在地 香川県三豊市三野町吉津甲153-1
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日 月曜日(祝日・振替休日の場合は開館。その翌日は休館) 年末年始(12/29~1/3)
TEL 0875-56-2301


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