瀬戸芸春会期開幕 笑顔、刺激 島々包む 人混み避けて巡る 島の歴史知る機会
春の瀬戸内、アート一色に-。瀬戸内国際芸術祭2022が開幕した14日、会場の島々には祭典を待ちわびた若者や家族連れらが訪れた。新型コロナウイルス下で行う初の芸術祭。来場者は感染症対策に気を配りつつ、瀬戸内の自然や歴史と融合したアートを鑑賞した。会場では住民やボランティアが出迎え、制作過程を解説する作家の姿も。あいにくの空模様の影響か混雑はなかったが、島々には笑顔と感動がじわりと広がった。
高松港では大人数のグループは見られなかったものの、検温を済ませた来場者が船着き場に並んだ。友人と2人で訪れた東京都の会社員伊勢千恵子さん(29)は「散策しながらアート鑑賞できるのは斬新。屋外展示が多いので密集も避けられる」と声を弾ませた。
今回の目玉の一つ、女木島の「女木島名店街」では、新作のガラス製の釣り具などをはじめ、アートの要素を盛り込んだ美容室や飲食店のブースがずらり。女木島の風景をデザインした布地を出品している作家の三田村光土里さんは、「クッションカバーなどに加工して、自宅で女木島の景色を楽しんで」と魅力を語った。男木島では作家の村山悟郎さんが、前回の芸術祭でドローイングを施した家屋の内壁をリニューアルした作品が注目を集めていた。
瀬戸内の歴史や食に刺激を受ける姿も。大島のハンセン病をテーマにした空間作品を鑑賞した東京都の会社員レイノルズ仁さん(40)は、「当時の隔離政策や入所者の生活を感じることができ、いい経験になった」と印象を語った。豊島の「島キッチン」では、感染症対策が施された店内で来場者が野菜や魚など“島の幸”を使った料理に舌鼓。千葉県の会社員岡彩実さん(57)は「タイが肉厚でぷりぷり。島のアートを楽しんだ後に、地元でとれた新鮮な食材を味わえるなんてぜいたく」と笑顔を見せた。
迎える住民側は盛り上がりに期待。土庄町のパート従業員岡本美菜稀さん(31)は「都会にはない美しい自然とアートがどうマッチしていくか、わくわくしている」と期待を寄せた。一方、会場となる地域は高齢者が多く、新型コロナを心配する声も聞かれた。坂出市沙弥島の会社員男性(61)は「訪れた人にはルールやマナーを守りながら、沙弥島の良さを堪能してほしい」と注文を付けた。
(四国新聞・2022/04/15掲載)