讃岐漆芸の写実的な表現に焦点を当てた展覧会「讃岐漆芸にみるリアリズム」が、香川県高松市紺屋町の市美術館で開かれている。重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定された音丸耕堂(1898~1997年)や磯井正美(95)らの緻密な意匠の作品を通じ、漆芸家の間で受け継がれてきたリアリズムの系譜をたどることができる。7月3日まで。

 今回紹介するのは13作家による38作品。讃岐漆芸の祖と称され、細かく正確な彫りを得意とした玉楮象谷(たまかじぞうこく)(1806~69年)をはじめ、耕堂の師で讃岐彫の名工とうたわれた石井磬堂(けいどう)(1877~1944年)のほか、独創的な蒟醤(きんま)の技法で写実と抽象を織り交ぜた作品を生み出した磯井如真(1883~1964年)や太田儔(1931~2019年)らを取り上げている。


音丸耕堂「彫漆菓子盆」

音丸耕堂「彫漆菓子盆」


 このうち、耕堂の「彫漆(ちょうしつ)菓子盆」は彫漆の技法を使い、タツノオトシゴやミノカサゴ、メダカといった水生生物を生き生きと表現。うろこやひれの細い線も彫り込んでおり、入念に観察した上で制作したことがうかがえる。


磯井正美「蒟醤むらさき箱」

磯井正美「蒟醤むらさき箱」


 正美の「蒟醤むらさき箱」は、つがいのアゲハチョウが舞う情景をあしらった代表作で、点彫り蒟醤によってりんぷんの付いた羽の質感を忠実に再現している。ほかにも作家それぞれの技法で昆虫や植物を表した作品が並び、讃岐漆芸の奥深さが一望できる。

 入場料は一般200円ほか。問い合わせは同館、電話087-823-1711。

(四国新聞・2022/06/23掲載)


高松市美術館



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