マルキン醤油記念館 小豆島町 天然醸造の苦労学ぶ 棒締機でもろみ絞り体験
昨年9月、小豆島に伝わる大型の木桶(おけ)を用いた天然醸造による醤油(しょうゆ)製造の手法が、「讃岐の醤油醸造技術」として国の登録無形民俗文化財に登録された。醤油は“うどん県民”にとって身近な存在だが、意外と知らないことが多いかも…。6月下旬、醤油の製造方法や昔ながらの道具、資料などを紹介する「マルキン醤油記念館」(香川県小豆島町苗羽)に足を運び、学びを深めた。
土庄港から坂手線のバスに乗り、30分ほどで「丸金前」に到着。馬木、苗羽地区一帯が醤油やつくだ煮を作る工場が軒を連ねる「醤(ひしお)の郷(さと)」と呼ばれ、バスを降りた瞬間、醤油の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
大正初期の工場を1987年に改装して開いた同館は、国内最大規模の合掌造りが特徴。早速中に入ると、会社の歩みを紹介する資料や写真、醤油ができるまでの工程を記したパネルが並ぶ。
実際に使われていた30石(約5・4キロリットル)もの醤油やもろみが入る「大桶(おおこが)」を横に寝かせ、一部をくりぬいた“トンネル”をくぐり抜けると、7メートル以上の長い棒の端に重りをつけ、てこの原理を応用してもろみから醤油を搾り出す巨大な棒締機(ぼうじめき)が。他にも唐箕(とうみ)や焙烙(ほうろく)、こうじをつくる「こうじ室(むろ)」など、100年以上前に使われていた醤油造りの道具や部屋がそろっている。先人たちが積み重ねた知恵や苦労に思いをはせながらじっくり眺めた。
午前10時と午後2時からは、手押しの小型棒締機でもろみ絞り体験と試飲ができる。棒締機に体重をかけていくと、醤油が少しずつ垂れてきた。一番最初に出た「自然だれ」が最もおいしいといわれ、味見すると塩辛くなく、まろやかな口当たりに驚く。思わず何度も飲んでしまった。
同館から3分ほど歩くと、築100年を超える国の登録有形文化財で、現在も使用している「天然醸造蔵ギャラリー」がある。人工的な加温や冷却をせず、自然のまま醤油を発酵、熟成させる蔵の内部を窓から見学した。
秋田杉を使った153本の木桶が4列に分けられ、約100メートル続く光景はまさに圧巻。木桶の中をのぞくと、発酵段階のこうじから気泡がぷつぷつと上がり、“呼吸”をしているように思えた。運が良ければ作業風景が見られるという。内部の濃厚なもろみの香りを放出させるスイッチが付いているのも面白い仕組みだ。
たくさん歩いた後は、同館物産館の名物「しょうゆソフトクリーム」(300円)を食べて涼もう。天然醸造蔵の木桶で仕込んだ「生じょうゆ」を使い、カラメルのような上品な甘さがうれしかった。
(四国新聞・2022/07/09掲載)
マルキン醤油記念館
所在地 | 香川県小豆郡小豆島町苗羽甲1850 |
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開館時間 | 9:00~16:00 7/20~8/31、10/16~11/30は9:00~16:30 |
TEL | 0879-82-0047 |