現代美術家の鴻池朋子さんによる特別展「みる誕生 鴻池朋子展」が16日、香川県高松市紺屋町の市美術館で始まった。牛革を使った巨大なトンビや動物のふんの模型など異彩を放つ約100点の作品が並び、来場者の感性を揺さぶっている。9月4日まで。


エントランスホールにつり下げられた新作「皮トンビ」を見上げる親子連れ=香川県高松市紺屋町、市美術館

エントランスホールにつり下げられた新作「皮トンビ」を見上げる親子連れ=香川県高松市紺屋町、市美術館


 同展は、アート作品を目で鑑賞するだけでなく▽手で「看(み)る」▽鼻で「診(み)る」▽耳で「視(み)る」―といった多様な方法で体感できるよう展示を工夫。来場者に新たな価値観や楽しみ方を見いだしてもらおうと趣向を凝らしている。瀬戸内国際芸術祭夏会期の参加展覧会にもなっている。

 エントランスホール天井には、特別展のために牛皮を継ぎはぎして制作した幅約12メートルの巨大な新作「皮トンビ」を展示。市美術館の所蔵品を「人間が作り出した物=人間の痕跡」と捉え、動物の痕跡であるアライグマのふんの模型などを同じ空間に並べて対比させたり、順路の天井からオオカミの毛皮を幾つもつり下げて、においや肌触りを感じられるようにしたりと、随所にユニークな展示手法を取り入れている。

 また、2019年に引き続いて今夏、大島(同市)にも瀬戸芸作品を展開する鴻池さんの発案で、大島と関連性を持たせた展示スペースを設け、熊本県の国立療養所菊池恵楓園の絵画クラブ「金陽会」メンバーが描いた園生活の様子や故郷の風景などの作品を掲出。初日の午後には鴻池さんのトークショーもあった。

(四国新聞・2022/07/17掲載)


高松市美術館



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