しょうゆの醸造や酒造などで財をなした佐野家の母屋や蔵などを改修した「讃州井筒屋敷」(東かがわ市引田)。江戸後期から明治初期に建てられた屋敷の中は、商家ならではの粋な意匠にあふれている。そんな屋敷の中の「秘密」を探ってみよう。

 引田町の古い町並みの中にたたずむ讃州井筒屋敷。広い敷地の中には、母屋と大きな蔵が立ち並ぶ。

 母屋の中庭にはモミジやサツキ、アジサイなどさまざまな植物が植えられ、花を咲かせたり葉を色づかせたりする。


母屋に入ってすぐの帳場から見た中庭

母屋に入ってすぐの帳場から見た中庭


 庭を眺めていて目に付くのは、料亭の天井や茶室の壁などで見かけるようなあじろ編みの塀。ガイドをしてくれた窪田史子さん(64)は「自分たちだけにしか見えない内側の部分にお金をかけるのが、商家ならではなのでは」と推測する。明治時代や大正時代に作られたという吹きガラスの戸も薄く、ここもぜいたくだ。


庭の向こう側には高貴な人が出入りした「御成門」が見える

庭の向こう側には高貴な人が出入りした「御成門」が見える


 茶室も見どころがたっぷり。南側の柱は全て違う木材で、杉や栗などの木が使われている。廊下も節のない木材。床の間の柱も「ビンロウジュ」と呼ばれるヤシ科の木やサルスベリが用いられ、商売人の粋な感性が伝わってくる。


シルエットが船のように見える左官窓=いずれも東かがわ市引田、讃州井筒屋敷

シルエットが船のように見える左官窓=いずれも東かがわ市引田、讃州井筒屋敷


 ここで、廊下の上部にも注目を。松や竹などの柄に彫られた部分がある。茶室の中の左官窓はシルエットが船に見える。引田港を拠点に栄えた佐野家らしい意匠だろう。

 屋根裏部屋にも上がってみた。ぜひ触ってほしいのが、柱や天井の板。どれもつるつるに磨かれていることに気づくだろう。ここも屋根裏だから、見えない部分。そのすべすべの手触りから、この家が大切にされてきた長い時間を実感した。

 家の中は心地よい風が吹き抜け、のんびり過ごすのにちょうどいい雰囲気。レトロな町並みも歩き、リフレッシュして。

 母屋の入館料は大人300円ほか。水曜日休館。問い合わせは〈0879(23)8550〉。

(四国新聞・2019/04/16掲載)

讃州井筒屋敷


所在地 香川県東かがわ市引田2163
営業時間 10:00~16:00(母屋)
定休日 毎週水曜日(祝日の場合は営業)
TEL 0879-23-8550


関連情報