瀬戸内国際芸術祭2022の夏会期(8月5日開幕)から公開となる作品の一つで、台湾の美術作家・王文志(ワンウェンチー)さんが香川県小豆郡小豆島町中山地区で制作を進めてきた「ゼロ」が完成し、30日に関係者を招いてお披露目会が開かれた。参加者は迫力ある竹の建築物の内外観をつぶさに見学し、「内部は光や風が感じられ、竹による意匠は小豆島の魅力が凝縮されている」と感激の声を上げた。


完成した「ゼロ」を見学する関係者=香川県小豆郡小豆島町中山

完成した「ゼロ」を見学する関係者=香川県小豆郡小豆島町中山


 王さんは2010年の第1回瀬戸芸から出品を続けており、今回で5回目の参加。いずれも同地区で竹を使った作品を発表している。今回のテーマは、新型コロナウイルス禍で壊れたり、乱れたりしたもののリセット。作品を通じて自分と向き合ってもらい、気持ちを落ち着けることで原点に戻れるようにとの願いが込められている。
 王さんは新型コロナの影響で来日が遅れ、制作は6月中旬に開始。材料となる竹は地元住民らが3月から4千本余りを切り出して用意しており、王さんは住民らの協力も得ながら急ピッチで作品を仕上げた。
 「ゼロ」は直径約15メートルの球体の空間をメインに、二つのカーブしたトンネル状の出入り口を備えている。竹の編み目からは陽光が差し込み、周囲の棚田を通った風が通り抜けていく。川の水が流れる音、鳥やセミの鳴き声が静かに響き、球体に開けられた三角形の窓からは春日神社境内の「中山の舞台」(国指定重要有形民俗文化財)が正面に見えるようになっている。
 お披露目会には、大江町長や地元住民ら約40人が参加。王さんは「多くの人の協力で作品が出来上がった。この場所は、もう古里だと思っている」とあいさつし、関係者とテープカットして完成を祝った。
 竹の伐採などで毎回協力している中山イベント推進会の井口平治会長(72)は「5回目の作品なのに新鮮に感じられるのが王さんのすごさ。新型コロナでスタートが遅れてどうなるかと心配したが、完成できてうれしい」とほっとした表情。町長は「光も風も取り込む大胆さと繊細さを感じる。小豆島の魅力あるアートを多くの人に見てもらいたい」と話した。

(四国新聞・2022/07/31掲載)


瀬戸内国際芸術祭2022


四国新聞 特集 瀬戸内国際芸術祭



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