標高292メートルの屋島山上に、高松市が整備を進めていた屋島山上交流拠点施設「やしまーる」が5日にオープンする。目指す姿は、自然や歴史など屋島の魅力を広く発信し、学びや憩い、触れ合いを深められる文化と観光の新たな融合空間。老舗観光地の「復権」に向けた核となれるか期待が集まる。


5日にオープンする屋島山上交流拠点施設「やしまーる」。瀬戸内海や高松市街地を見下ろす姿は、まさに「天空の拠点」のようだ=香川県高松市屋島東町(上空からの写真は、SUO撮影)

5日にオープンする屋島山上交流拠点施設「やしまーる」。瀬戸内海や高松市街地を見下ろす姿は、まさに「天空の拠点」のようだ=香川県高松市屋島東町(上空からの写真は、SUO撮影)


 やしまーるは、屋島寺西側のホテル跡地約3400平方メートルに整備。曲線を描く独創性あふれるデザインが特徴的な回廊型の建物で、全長約200メートル、延べ床面積は約千平方メートル。屋根には地元特産の庵治石で作った瓦を約3万枚使っている。



 空や海、森など自然との一体感を味わえるよう、地形の起伏に合わせて設計され、壁面にはガラスを多く使用。瀬戸内海の多島美を堪能できる展望スペースのほか、多目的ホールや飲食・物品販売スペースなどを設け、パノラマ展示室では源平合戦をテーマにしたアート作品の制作が進められている。総事業費は約16億4千万円。
 施設は瀬戸内国際芸術祭2022夏会期の作品にも位置付けられており、夏会期初日の5日午前9時にオープンする。開館時間は午前9時~午後5時(金土曜・祝前日は午後9時まで)。入館無料。
 商業施設の運営サポートなどを手掛けるイースト(東京)が指定管理者として運営する。4日には関係者が出席して落成式が開催される。

展望スペース 絶景堪能、夕夜景美しく

 屋島山上からの絶景を楽しめる人気のビュースポット「獅子の霊巌(れいがん)展望台」側に設けられた建物西端のスペース。地面から3.3メートルの高さにあり、瀬戸内海や高松市街地を見下ろし、遠くは瀬戸大橋や岡山県を望むなど、ダイナミックな大パノラマを満喫できる。



 夕暮れ時以降になると、景色はまた違った様相に。「日本の夕陽百選」や「日本の夜景100選」に選定されている夕夜景は息をのむほど美しく、幻想的なひとときを味わえる。
 通路に沿って横長のベンチが設置されているが、展望テラスに出て、心地よい風を受けながら眺めるのがお勧めだ。

パノラマ展示室(作品制作中) 源平合戦テーマ、臨場感たっぷり

 かつて人気を集めた「パノラマ館」の手法を用いたアート作品の展示室。源平合戦「屋島の戦い」をテーマとした約180度のパノラマ絵画(縦約5メートル、横約40メートル)とジオラマによる巨大な作品を展示する。



 「屋島での夜の夢」と題して、東京芸大名誉教授の保科豊巳氏が芸術祭秋会期の作品として制作を進めている。砂浜で戦う様子や荒れ狂う瀬戸内海などが描かれた油絵と壊れた舟、岩場などのジオラマが一体的に表現され、迫力あるシーンを臨場感たっぷりに味わえる。
 5日のオープン時に作品はまだ観覧できず、秋会期に合わせて開室する。

飲食・物品販売スペース 学生とのコラボ土産も

 来訪者がほっとくつろげるエリア。建物の最南端に位置する。
 物品販売のスペースは、香川大学の学生と地元企業がコラボレーションした土産物が目玉の一つ。商品やパッケージのデザインなどを共同開発し、建物の形をかたどったオリジナルクッキーをはじめ、チョコクランチ、豆菓子、風呂敷型バッグを販売する。このほか、庵治石を使ったマグネットなどもあり、ここでしか購入できない品を用意している。庵治石製グッズは順次開発していくという。
 飲食のスペースではオープンカフェも設置。サンドイッチなどの軽食やソフトドリンクが楽しめる。



屋外広場 のんびりと開放感満喫

 こども広場、エントランス広場、多目的広場など大小の広場で構成。開放感に浸りながら、のんびりと時間を過ごすことができる。
 屋外広場全体の広さは約1300平方メートル。円形のベンチなどが設けられ、児童生徒の遠足などのほか、家族連れらがピクニック気分でお弁当を広げるのにうってつけだ。



 レンタルスペースとしての利用も考えており、市は音楽イベントやマルシェ、ヨガ、立食パーティーなどさまざまな催しによるにぎわい創出に期待を寄せている。広場の中央には地形に合わせて階段が設けられており、イベント時の座席としても活用できる。

文化観光情報案内スペース ビジターセンターにも

 ビジターセンター的な役割を果たすスペース。屋島の歴史や文化、自然に関する情報を写真などで発信する。児童生徒の遠足や校外学習、生涯学習の場などとして利用が望めそうだ。



 5日のオープン時はまだ展示物がそろっておらず、パノラマ展示室と同様に芸術祭秋会期に向けて内容を充実させる予定。来訪者が歴史や文化などを体系的に学ぶことができ、屋島の特性や魅力などを五感で感じられる空間づくりを考えているという。
 山上での周遊を促し、新たな楽しみ方の発見につながるような仕掛けも提案。他スペースへの展示物配置も検討している。

多目的ホール イベント、会合に活用

 来訪者らによる交流イベント、ワークショップ、企業や地域の会議・会合、子どもたちの学習の場など、いろいろな用途を想定した貸しスペース。建物東側に位置し、広さは約90平方メートル、最大90人程度の利用が可能。椅子を自由にレイアウトできるほか、通路と仕切るための可動式のパーテーション、プロジェクターなどを備えている。



 北西側の扉を開け、隣接する屋外広場と一体的に使うのも良い。市は、来訪者らが屋島の魅力を再発見し、共有するための交流や活動の場として位置付けており、ユニークベニュー(特別な会場)としての活用も見込んでいる。

コロナ対策

 指定管理者のイーストは、建物中央にあるエントランスと北側のサブエントランスに検温機能が付いた消毒器を設置。ほかにも出入りできる箇所はあるが、新型コロナウイルスの感染者が急拡大していることから、来訪者には原則、エントランスとサブエントランスからの出入りをお願いする方針。建物内は定期的に換気を行うほか、一度に入場できる人数を制限する可能性もある。

(四国新聞・2022/08/04掲載)




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