5日に開幕した瀬戸内国際芸術祭2022夏会期からの公開作品の一つで、中国の美術作家・向阳(シャンヤン)さんが香川県小豆郡小豆島町草壁本町の草壁港で制作を進めてきた「辿(たど)り着く向こう岸」が完成し、6日に地元住民らを招いてお披露目会が開かれた。船をモチーフにした巨大なアーチ構造と、細かな細工が施された古い中国家具などを組み合わせた姿に、参加者は「壮大な未来への期待感が湧き上がってくる作品」と笑顔で完成を祝った。


作品の見学に訪れた地元住民らを迎え入れる向さん(中央)=小豆島町草壁本町、草壁港


 向さんが瀬戸芸に作品を出品するのは2019年に続き2回目。今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響で来日が6月下旬となったため、ほとんどの作業を中国で実施。7月1日から地元工務店の協力で、作品を組み上げていった。
 作品は「これまでに到達することのできたさまざまな場面や場所は、これから目指す未来へとつながっている」ことを、全長25メートル、幅9メートル、高さ10・4メートルの巨大な船の形で表現したという。中国で切り出したマツ材などで船を逆さにしたようなアーチを構成。その間の空間には、廃棄されていた100年以上前の古い家具や建具を、施されていた彫刻なども含めて丁寧に修復し、計13の部屋に仕上げた。各部屋からの風景が、自分を見つめ直すきっかけになるようにとの思いが込められている。
 お披露目会には、大江町長や地元住民ら約100人が参加した。向さんは「3年前から温めてきた企画が形にできたことで胸がいっぱい。地元の皆さんの協力に本当に感謝している」とあいさつ。地元の太鼓グループの演奏の後、内覧会を行った。
 大江町長は「大勢の夢が、ここから世界や未来へとつながっていく期待感が膨らむ作品。多くの人にこの雰囲気を味わってもらいたい」と話した。


瀬戸内国際芸術祭2022


四国新聞 特集 瀬戸内国際芸術祭



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