香川県高松市紺屋町の市美術館などで、一風変わった絵画展が行われている。同館図書コーナーに夏目漱石の小説「吾輩は猫である」に登場する猫の絵が並び、丸亀町商店街にある同館の展示スペース「ブランチギャラリー」にはチャップリンら往年の映画スターの人物画がお目見え。図書室やショーウインドーという思わぬ場所で、ノスタルジー漂う作品を見つけた美術ファンらの驚きを誘っている。9月11日まで。


商店街のショーウインドーに展示された映画俳優の絵画作品=香川県高松市丸亀町

商店街のショーウインドーに展示された映画俳優の絵画作品=香川県高松市丸亀町


 制作したのは同市出身の画家依田洋一朗。米ニューヨークに拠点を置き、古い映画の登場人物や米国の劇場を題材に絵画作品を発表している。瀬戸内国際芸術祭の参加作家としても知られ、2016年から女木町で「女木島名画座」を公開している。
 今回の取り組みは、依田が昨年ニューヨークの図書館で個展を開いた際、絵画と本が融合した展示風景に手応えを感じたのがきっかけ。それを聞いた高松市美術館の学芸員が、依田の故郷である同市でも開催するよう求めたという。
 図書コーナーでは「I Am A Cat」と銘打って油彩画約20点を展示。寝そべったり、窓をのぞいたりとさまざまな行動をとる猫の絵が本棚の上や本と本の間などに並ぶ。1936年の「吾輩―」の映画をベースに制作したといい、「苦沙弥(くしゃみ)先生」らを演じた当時の俳優も生き生きと描いている。
 ブランチギャラリーの展示「Bromide Paintings」は、チャップリン主演の「モダン・タイムズ」の名シーンを表現した新作のほか、ハンフリー・ボガードら銀幕スターのブロマイド作品約10点を紹介。俳優の豊かな表情から依田の映画愛の深さがうかがえる。
 中でも「吾輩―」は依田が小学生の頃、高松市の書店で出合った思い出の小説だといい、「故郷で展示できてうれしい。現代の絵画を通して昔の小説や映画を懐かしんでほしい」と話している。

(四国新聞・2022/08/11掲載)


高松市美術館



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