フィンランドのリエクサ国際コンクールユーフォニアム部門で日本人として初めて優勝し、国内外から注目を集める佐藤采香(あやか)(29)が24日、地元高松市でリサイタルを開く。実力ある若手奏者を取り上げる東京オペラシティ文化財団の企画。2年前にスイス留学を終えて日本で本格的に活動する佐藤に、楽曲構成のポイントや近年の取り組みについて聞いた。


「ユーフォニアムの楽器としての可能性を感じてほしい」と話す佐藤さん=高松市屋島西町、穴吹学園ホール


 ―毎年全国から10人の若手奏者を選ぶ東京オペラシティから抜てきされた。

 出演するのが夢だったこのシリーズで凱旋(がいせん)できてうれしい。高松でのリサイタルは1年半ぶりだが、今の自分を映し出す「セルフポートレート」のような内容になっているのでぜひ聴きに来てほしい。

 ―企画のテーマとして、バッハから現代音楽までを取り上げることが求められる。構成のポイントは。

 バッハはスイスで勉強する中で軸となった作曲家。特に感銘を受けたのは、バッハが当時フルートを新たに楽曲に取り入れたことでソロ楽器としての地位を高めたこと。一方でユーフォニアムは楽器の中でも“新入り”に当たるため、現代の音楽家が作品を作ることで発展を後押しするべきだと考えている。プログラムにはそういった思いを込めた。

 ―具体的な曲は。

 バッハの二つのフルート曲をユーフォニアム向けに編曲して演奏する。作曲された時期に20年ほどの開きがあり、聴き比べることでバッハの中でのフルートの印象や役割が変化しているのを感じてもらえると思う。

 ―現代音楽ではどんな曲を予定する。

 ユーフォニアムの生演奏と映像、ライブ電子音響を組み合わせた斬新な取り組みに挑戦する。ホール全体を包み込むようなドラマチックな音空間を創出するのが狙いで、ユーフォニアムのポテンシャルの高さを感じてほしい。
 また、数年前に芸大の同級生に依頼した初委嘱曲を新たに組曲として制作してもらった。童話「ジャックと豆の木」に着想を得たもので、私の成長を映し出す大切な曲として位置付けている。

 ―香川でのワークショップや演奏会にも力を入れている。

 私が人生をかけて取り組んでいる音楽で故郷の人の役に立ちたい。ワークショップでは自分の大切にしたい音を表現するよう伝えており、子どもたちの真剣な表情を見ているとより一層応援したくなる。これからもライフワークとして続けていきたい。

 ―今後の抱負は。

 さまざまな作曲家と作品を作り、本物の音楽を追究していく。今は芸大の同級生らとオーケストラを結成しているが、もっと演奏仲間を増やして室内楽にも挑戦したいと考えており、将来香川の方々にも紹介できたらうれしい。

 さとう・あやか 高松一高卒。東京芸大、同大学院を経てスイス・ベルン芸術大を修了。2018年フィンランド・リエクサ国際コンクール第1位。17年に香川県文化芸術新人賞を受賞。桐朋学園大音楽部門特任講師。

【公演メモ】
 24日午後2時開演。会場は高松市屋島西町の穴吹学園ホール。入場料は3000円。問い合わせは穴吹学園ホール、電話087-844-3511。

(四国新聞・2022/09/19掲載)



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