観音寺総合高校(香川県観音寺市天神町、藤原裕樹校長)の工業科機械科の生徒たちが、瀬戸内国際芸術祭秋会期に合わせ、「アートなベンチ」3台を制作し、会場となっている同市の伊吹島に設置した。瀬戸芸に出展している若手建築家ユニット「KASA」とコラボし、島特産のイリコの姿を表現した作品や、角度によって太陽にも月にも見える作品をデザイン。「見栄えのする満足のいくものができた。多くの人が鑑賞し、使って楽しんでくれるとうれしい」と話している。

 同校は伊吹島の住民や瀬戸芸で島を訪れる人たちに喜んでもらおうと、さまざまな企画を展開。機械科では3年生6人が課題研究の授業の中でベンチの制作に取り組んだ。フィールドワークを踏まえ、考案したコンセプトやデザインを、KASAの2人にアドバイスを受けながらブラッシュアップ。制作は7月に取りかかり、秋会期開幕直前の9月下旬に完成した。


イリコの姿が影の中に浮かび上がる「いりこの煌めき」


 「いりこの煌(きら)めき」は、テーブルなのか椅子なのか分からない謎かけのような作品。座面にイリコの形をした穴を幾つも開け、太陽に照らされると影の中にイリコの姿が浮かび上がる。地面はコンクリートを白く塗装し、影がくっきりと見えるように工夫した。


正面から見ると太陽、横からだと月に見える「Sun and Moon」=観音寺市伊吹町


 「Sun and Moon」と名付けた作品は1人掛け。正面から見ると太陽、横からは月に見えるように、厚さ2ミリの平たい鉄板をガスバーナーで熱しながら丸く成形した。太陽が落ちて月が昇り、月が落ちたらまた太陽が昇るというサイクルのように、過疎化に悩む伊吹島が将来にわたって持続するようにとの思いを込めている。
 墓参りに訪れる住民に使ってもらう目的で作った「船と安らぎ」は、島にあるものを材料にしようと、瀬戸芸の作品「浜辺の歌」の舞台になっている旧造船所の船木を使用している。
 制作メンバーの細川慎大郎さん(17)は「KASAさんからは生徒だけでは発想できない素晴らしいアドバイスをもらい、感動した。普段の授業では学べないことを体験でき、ものづくりの楽しさを感じられた」と充実した表情で語った。

(四国新聞・2022/10/23掲載)


瀬戸内国際芸術2022


四国新聞 特集 瀬戸内国際芸術祭


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