国の重要文化財に指定された香川県内最古の洋式灯台「鍋島灯台」(坂出市与島町)。昨年、1872(明治5)年の初点灯から150年を迎え、今も現役で備讃瀬戸海域を往来する船を見守る。1世紀半もの間、風雨に耐えながら重要な役割を担い続ける灯台に触れてみようと、高松海上保安部の担当者同席の下、特別に内部へ入れてもらった。


県内最古の洋式灯台「鍋島灯台」を案内してくれた海上保安部の間賀さん=坂出市与島町、鍋島

県内最古の洋式灯台「鍋島灯台」を案内してくれた海上保安部の間賀さん=坂出市与島町、鍋島


 塩飽諸島の一つで鍋を伏せたような形が特徴の鍋島へは、与島パーキングエリアから徒歩約20分。案内してくれた同保安部交通課長の間賀巧さんによると、灯台が建設された当初、鍋島は離島で灯台守とその家族だけが暮らし、水くみなどのために毎日与島まで舟で渡っていたという。
 約1ヘクタールの島内に立つ灯台は白塗りの石造りで高さ約9・8メートル。風向きを知らせる風見鶏が頭部で揺れて愛らしい。「日本の灯台の父」と呼ばれる英国人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンが設計、監督を行い、1872年12月15日に香川で初めて設置点灯された。第6管区内で最も古い灯台で、今でも建設時とほぼ変わらない姿が残っている。
 建設当時、鍋島の周辺は岩礁が多く潮の流れも複雑だったことから、夜間航行が困難だった。そのため鍋島灯台の灯火を見た船舶は難所海域を察知し、最寄りの停泊地に留まって夜明けを待って通航していたという。灯台としては珍しい停泊信号として利用され、船員たちの命を守るための重要な役割がうかがえた。
 鍋島灯台は三層構造。最上階へとつながる円筒形の内部は中心に高さ8・8メートルの灯器が通っているため足場が少なく、大人4人が入ると狭いと感じるだろう。2階は屋外に出ることができ、かつては目視で霧の状態などを確認していたという。


赤と緑色のフィルターが光源であるランプの周りを回転して発光する仕組み。瀬戸大橋が間近だ

赤と緑色のフィルターが光源であるランプの周りを回転して発光する仕組み。瀬戸大橋が間近だ


 最上階まで階段で上ると海上を照らすランプがお目見え。直径61・3センチで大人の上半身が隠れるくらいの大きさだ。日没から日の出まで自動点灯し、赤と緑色のフィルターが光源の周りを回転して発光する仕組みで灯光は約20キロ先まで届く。
 最上階は陸地側以外の270度の眺望が広がる。間賀さんは「穏やかな瀬戸内海でも危険な場所はたくさんある。灯台が海の道しるべとして多くの船員らの命を守ってきた歴史を知ってもらえたら」と話し、静かにたたずむ灯台に思いを寄せていた。
 灯台は1991年から無人管理となり、現在はイベントなどを除いて内部は公開していないが、鍋島への立ち入りと外観の見学は自由にできる。

(四国新聞・2023/2/11掲載)



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