香川県観音寺市柞田町の絵本作家、近藤瞳さん(34)のデビュー作「まって! まって!」(ポプラ社)の原画展が、香川県丸亀市大手町の市民交流活動センター「マルタス」で開かれている。風に飛ばされた帽子を追う様子を子どもの目線で描いた同作は色鉛筆を使って1枚1枚丁寧に描き上げており、近藤さんは「筆圧や筆跡も分かる。一生懸命描いた私の汗と涙を楽しんでもらいたい」と話している。


デビュー作の絵本を手に笑みを浮かべる近藤さん=香川県丸亀市大手町、市民交流活動センター「マルタス」

デビュー作の絵本を手に笑みを浮かべる近藤さん=香川県丸亀市大手町、市民交流活動センター「マルタス」


 近藤さんは埼玉県出身。武蔵野美術大を卒業後、定職に就く傍ら、趣味で絵本制作を続け、2017年から本格的に絵本作家の道を歩み始めた。結婚を機に18年3月に夫の古里の観音寺市へ移住。現在は1男1女の母親だ。
 25歳のころ、イベントに出品するなど趣味で続けていた絵本制作を「もっと多くの人に見てもらいたい」と出版社などへ持ち込むようになった。28歳になってデビュー作のラフ画が編集者の目にとまり、以降はタイトルを変えたり、文章を全部なくしたりと試行錯誤を繰り返したという。
 昨年4月に出版されたデビュー作は、風に飛ばされた帽子を追っていく女の子の目線で進行する横長の大型本。大人は腰から下しか描かれておらず、ペットの犬などは大きく、文章は女の子が発する最小限の言葉だけといった独特の構成で「子どもたちが見ている世界を描きたかった。試行錯誤している間に子どもが生まれ、よりイメージが深まった」と振り返る。
 原画展の開催は今回が初めてで、「作っている裏側も見てもらいたい。制作の過程を披露することを通じて作る楽しさを伝えられれば」と近藤さん。香川へ移住してから5年が経過し、「空気がきれいで過ごしやすい。子どもたちも伸び伸びと育って毎日が楽しい」と充実感を漂わせた。
 原画展は1階展示コーナーで30日まで。開館時間中は自由に鑑賞できる。9日には同館2階で「読み聞かせ&サイン会」を開く。定員は40人。事前申し込みが必要。問い合わせはマルタス0877-24-8877。

(四国新聞・2023/04/06掲載)



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