香川県善通寺市の総本山善通寺(菅智潤法主)は18日、16世紀の火災で焼け残った土製の「塑像(そぞう)薬師如来像頭部」について、焼ける前の状態を復元して一般公開を始めた。弘法大師空海の誕生1250年記念事業の一環で、科学技術を駆使して仏像専門家らが6年がかりで完成させた。公開は記念祭が終わる6月15日まで、同寺金堂で行う。無料。


復元した塑像薬師如来像頭部について説明する山崎名誉教授。左下は復元前の頭部を写したパネル=香川県善通寺市、総本山善通寺

復元した塑像薬師如来像頭部について説明する山崎名誉教授。左下は復元前の頭部を写したパネル=香川県善通寺市、総本山善通寺


 同像頭部(縦46センチ、横38センチ)は、8世紀末に空海が自作したと伝わってきた。元々は座像で、1558年に同寺が兵火に見舞われた際に前に倒れ込み、顔だけが焼け残ったとみられている。
 復元プロジェクトは2018年にスタート。山崎隆之・愛知県立芸術大名誉教授の監修で、CTスキャンなどを使って頭部を分析した。その結果、別製の螺髪(らはつ)を貼り付けた如来型の像だったと確認。また制作技法や顔つき、空海自作の他の像との比較などから、774年生まれの空海よりも古い時代に作られた可能性があることも判明した。
 復元した頭部は樹脂製で、高さ93センチ。山崎名誉教授によると、3Dプリンターで頭部の石こう像を作り、欠損部を補う形で復顔を実施。制作年代が近いとみられる蟹満寺(京都)の釈迦(しゃか)如来座像、東大寺(奈良)の不空羂索(ふくうけんさく)観音立像などを参考に、顔や螺髪、耳を整えたという。
 この日は開眼法要があり、菅法主らが読経。寄進者が招かれ、復元過程についての説明が行われた。同寺の松原潔学芸員は「薬師如来像を見ていたであろう若き日の空海のまなざしを、復元像を通じて追体験できるのでは」と話した。
 頭部の復元を前に、既に3分の1サイズの全身復元像(高さ57センチ)も制作。元の像と同じ技法や素材を目指した塑像で、23日から同寺宝物館の常設展で見ることができる。6月15日までは秘仏本尊・瞬目(めひき)大師像の特別開帳と常設展などがセットで、拝観料2千円(高校生以下無料)。

(四国新聞・2023/04/19掲載)


総本山善通寺



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