「天空の鳥居」というと香川県観音寺市高屋町の高屋神社を想像する人が多いかもしれないが、最近、「東の天空の鳥居」として注目を集め始めているのが香川県三木町氷上の嶽山(だけやま)(標高204メートル)山頂にある龍王神社の鳥居だ。ぜひ写真に収めたいと思い、町観光協会の担当者の案内で山登りに挑戦した。


天空の鳥居の向こうには町並みが広がっていた=香川県三木町氷上

天空の鳥居の向こうには町並みが広がっていた=香川県三木町氷上


 高松市中心部から車で約40分走ると、山の北側の道で「嶽山登山口」と書かれた看板が目に入った。しばらく進み、駐車スペースに車を止め、鳥居を目指して歩を進めた。
 序盤は歩きやすい登山道が整備されており、テンポ良く足が進む。5分ほどすると、景色が開け始めて砂地が目立つようになり、小さな石がたくさん転がっていて滑りやすくなってきた。頂上まで半分近くの地点に着くと、むき出しの岩肌が広がっている。その上には、急斜面に立つ体を安定させて登るための長い鎖があった。


鎖を頼りに崖を登る。足元には注意が必要だ

鎖を頼りに崖を登る。足元には注意が必要だ


 想像以上の傾斜に圧倒され、登り切れるだろうかと不安が募ったが、同協会の村尾隆明さんの「頂上から見る景色が疲れを吹き飛ばしてくれますよ」との言葉に後押しされ、鎖を握って進み始めた。息を切らし、やっとの思いで山頂に着くと、聞いた通りパノラマの絶景が待っていた。
 独立峰のため、遮るものがなく高松市街や屋島など周囲の景色が一望できた。対岸の岡山県が望める日もあるそうだ。秋には麓の「太古の森」に群生するメタセコイアの紅葉が鮮やからしい。鳥居の向こうには真っ青な空と山の連なり、町並みが広がっていて、まさに天空の鳥居だった。
 近くに高さが3メートル以上はある鉄のポールが立っていた。村尾さんによると、祝日の度に、地元住民でつくる「嶽山掲揚会」がここに国旗を掲揚するという。同会はこの山の維持管理にも貢献しているそうで、会の谷畑正会長(80)に話を聞いてみた。
 谷畑会長によると、国旗掲揚は地元住民の提案でスタートし、1981年に頂上に掲揚台を整備。メンバーは12人で、祝日には安全のため2人一組で山に登って縦5メートル、横6メートルの大きな国旗を掲げている。20年ほど前には、頂上までの道のりが険しいことから、登山客の安全のため鎖の設置も自分たちの手で行ったそうだ。
 鎖が必要なほどの登山体験を求めて、県外から足を運ぶ人もいるという。谷畑会長は「厳しいけれど登りがいのある山。鳥居と絶景のコラボレーションをぜひ楽しんでほしい」と話している。
 所要時間は往復で1時間程度。登る際は動きやすい服装と滑りにくい靴を身に着けよう。

(四国新聞・2023/05/27掲載)



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