汗ばむ日が多くなった。うちわが活躍するシーズンの到来だ。香川でうちわと言えば、国の伝統的工芸品に指定されている「丸亀うちわ」が思い浮かぶ。香川県が誇る伝統工芸に触れてみようと、製作体験などができる「丸亀うちわミュージアム」(香川県丸亀市中津町)を訪ねた。


のりを塗った骨組みに紙を貼り付ける=丸亀市中津町、丸亀うちわミュージアム


 1600(慶長5)年、丸亀の旅僧が九州でうちわの製法を伝授したのが熊本県の来民(くたみ)うちわの発祥とされていることから、丸亀うちわの技術は江戸時代初期までに確立していたと考えられている。その後、丸亀藩が藩士の内職としてうちわ作りを奨励したことで地場産業として急速に発展。1997年に国の伝統的工芸品に指定された。現在は、国内シェア9割以上、年間約1億本以上のうちわの生産量を誇る。
 同ミュージアムは、同市港町にあった「うちわの港ミュージアム」の老朽化に伴い、今年3月に中津万象園(同市中津町)の園内にリニューアルオープン。製作体験は午前と午後の2回開催しており、伝統工芸士らが講師を務める。取材に訪れた6月初旬の午前には、ポーランドの団体旅行客30人が参加していた。
 体験ではまず、着物姿の女性や草花などが描かれた絵柄約20種類からうちわに貼る紙を選ぶ。続いてはけで竹の骨組みと紙にのりを塗り、紙を骨組みに合わせる。見栄えを左右する大事な工程とあって、参加者は真剣な表情で作業に向き合い、その様子を家族らが動画を撮るなどして記念に残していた。
 貼り付けが終わったら、中心部分から上下に向かってたわしを滑らせて紙についたしわを伸ばす。20分程度乾かした後、うちわの形に湾曲した鉄製の「たたき鎌」を当て、それを木づちでたたいて余分な部分を切り落として成形する。指導した伝統工芸士の男性は「ここが一番、体験者が盛り上がる工程。木づちを振り下ろすときの力加減にこつが必要で、これが面白さにつながっているのかも」と話していた。
 最後に、紙のはがれを防ぐため、「へり紙」などを周囲に貼ったら完成。参加したマルティナ・ココツカさん(18)は「のりを塗る工程などが難しかったがとても楽しく作業できた。作ったうちわは大切に使いたい」と笑みを浮かべていた。


完成したうちわを手に写真に収まるポーランドからの旅行客


 気軽に丸亀うちわができるまでを学べる製作体験だった。今年は自分で作ったお気に入りの1本で夏の暑さを吹き飛ばそう。
 参加費は千円、所要時間は1時間程度。問い合わせは丸亀うちわミュージアム、電話0877-24-7055。

(四国新聞・2023/06/24掲載)


丸亀うちわ

丸亀うちわミュージアム


所在地 香川県丸亀市中津町25-1
開館時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日 毎週水曜日(祝日の場合は翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
駐車場 乗用車約15台。大型バスの場合は事前に相談
TEL 0877-24-7055


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