総延長が106キロにもおよぶ香川用水の歴史や恩恵を後世に伝える「香川用水記念公園」(香川県三豊市財田町)。園内には水と触れ合える大型遊具や、用水の仕組みなどが学べる資料館があり、休日には家族連れらでにぎわう。梅雨明け間近、いよいよ夏本番だ。夏といえば水不足―。6月下旬、香川の水事情を考えてみようと足を運んだ。


「じゃぶじゃぶ池」に設置された遊具「アルキメデスのポンプ」などで遊ぶ児童たち=三豊市財田町、香川用水記念公園

「じゃぶじゃぶ池」に設置された遊具「アルキメデスのポンプ」などで遊ぶ児童たち=三豊市財田町、香川用水記念公園


 JR土讃線の讃岐財田駅から車で約15分。敷地面積約6ヘクタールの広大な園内には小川や広場などを設けており、まるで庭園のような景観だ。四季を通じてさまざまな草花も楽しめ、特に秋ごろはイロハモミジなどの紅葉が鮮やかに広がるという。
 古来から降水量が少ない上に、長大な河川がないことから水資源に恵まれなかった香川。かつては農民らによる水争いが絶えなかったという。県は慢性的な水不足の解消を図るため、1968(昭和43)年に香川用水の建設に取りかかり、74年に完全通水。長年の水不足が抜本的に解消されたことを記念して、97年5月に同園を開園した。
 同園は、早明浦ダム(高知県)から池田ダム(徳島県)を経て送られてくる香川用水が導水トンネルを出て初めて水面を見せる「東西分水工」を中心に整備。東西の幹線水路に分かれて県内各地に水を届ける重要な分岐点でもある。
 水場に遊具などが備わる近くの「じゃぶじゃぶ池」まで歩くと、善通寺東部小の児童が校外学習で訪れていた。数人が設備の一つ「足踏み式水車」を踏み込んで動かしている。昔ながらの田んぼへの引水方法を体験しつつ歓声を上げて楽しむ様子に思わず頬が緩んだ。


解説パネルや道具を通して香川用水の歴史や水の大切さを学べる「水の資料館」

解説パネルや道具を通して香川用水の歴史や水の大切さを学べる「水の資料館」


 屋外を見て回った後は同園の中核施設「水の資料館」へ。1階から3階までの吹き抜けにつり下がる巨大な龍のオブジェに出迎えられ2階の常設展示室に進むと、香川の水を巡る歴史について記した解説パネルや模型、道具などがずらりと並んでいた。
 パネルには満濃池や豊稔池などを築いた弘法大師空海をはじめとする先人たちの技術や、少ない水を分かち合うための規範「水利慣行」の変遷などを記しており、現代にも通ずる築造方法や水利秩序に感心しきり。3階の展望展示室では水圧を利用した体験遊具などが楽しめ、晴れた日には屋上展望台へ上がって香川用水の水路が表現された「記念の広場」などを見渡すのもいいだろう。
 夏休み期間にはワークショップなどを通じて水の大切さを学ぶ親子体験教室が開かれる予定だという。限りある貴重な水をどう使うか。改めて家族で考える機会になるはずだ。
 問い合わせは同園、電話0875-67-3760。

(四国新聞・2023/07/08掲載)



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