農林水産省の「棚田遺産」に選ばれている小豆島町中山の中山千枚田で8日夜、稲に付く害虫を火で追い払って豊作を祈る「虫送り」が行われた。参加した地元の家族連れや観光客らが薄暗がりの中、火手(ほて)と呼ばれるたいまつを水田にかざしながら練り歩くと、一帯は揺らめく炎の列で幻想的な雰囲気に包まれた。


棚田に火手の炎をかざしながら、あぜ道を練り歩く参加者=香川県小豆島町中山

棚田に火手の炎をかざしながら、あぜ道を練り歩く参加者=香川県小豆島町中山


 虫送りは農薬がなかった江戸時代から伝わる風習。千枚田を見下ろす位置にある小豆島霊場44番札所・湯舟山で関係者が五穀豊穣(ほうじょう)を祈願した後、参加者は2コースに分かれて出発した。例年なら午後7時ごろに火手に点火するが、降雨の予報があり約30分前倒し。「とーもせ、ともせ」とかけ声を上げながら、波形模様を描く水田に炎をかざし、農村歌舞伎の舞台がある春日神社までゆっくりと進んだ。
 小豆島の虫送りは、かつては中山から地区ごとにリレー形式で火をつなぎ、虫を海に追いやっていたとされる。中山では一時途絶えていたが、2010年に小豆島が舞台の映画「八日目の蟬(せみ)」の撮影で再現されたことをきっかけに、地元自治会などでつくる実行委が11年に復活させた。
 実行委は「虫送り」を将来にわたって継続できるよう小豆島観光協会などと協議し、本年度から火手の一部を有料化した。

(四国新聞・2023/07/09掲載)



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