七つの島へ思い思い 雨の中、外国人ら続々 「作品と風景調和」 直島 瀬戸内国際芸術祭2019 夏
瀬戸内国際芸術祭2019夏会期が開幕した19日、会場となった七つの島では、家族連れらが思い思いに島内の会場を巡り、アート作品を楽しむ姿が見られた。高松地方気象台によると、高松市の同日午前9時の気温は24・4度。時折雨が強く降る、ぐずついた天候にもかかわらず、高松港の船乗り場は朝早くから多くの人で混雑した。目的地に向かう船が着くと、公式ガイドブックを手にした家族連れらが足早に乗船。アートに彩られた島に向かっていた。
直島 「作品と風景調和」
直島行きの定期船は午前9時台の高松港発から混雑。9時5分発の高速艇は定員約80人のほとんどを中国や欧米人など外国人来場者が占めた。船が宮浦港に着くと、来場者は島内を巡るバスに乗り込み、お目当ての会場に向かっていた。
直島町倉浦ではベネッセアートサイト直島の李禹煥(リウファン)美術館で、アーチ形の屋外彫刻「無限門」が全面公開された。アーチの下をくぐる趣向の作品で、来場者はスマートフォンなどで撮影しながら鑑賞。中国・北京から友人と訪れた音楽家の小石(シャオシー)さん(37)は「無限門はいずれの方向からも通ることができ、風景に変化があって素晴らしい。作品は風景とマッチしていて、ここでしか見られないものだ」と感慨しきり。さいたま市から会社の同僚と訪れた高野良子さん(55)は「景色も芸術になっている。今日は一日直島を堪能したい」と笑顔で話した。
男木島 心引かれる新作2点
夏会期からの新作2点がお披露目された高松市沖の男木島には、午前中から国内外のファンらが来島。集落の中に登場した存在感あふれるアートを堪能した。
京都市の介護福祉士大津佳子さん(61)は、民家の天井から水が流れ落ちる遠藤利克さんの「Trieb―家」に心引かれた様子。2010年の第1回から通ってはリポートを漫画形式の同人誌にして発行しているそうで、鑑賞中も創作意欲を燃やしていた。
オーストラリアから訪れたポール・トリケットさん(64)は、ドイツ人作家のグレゴール・シュナイダーさんが日本家屋や畑を墨汁で染め上げた屋外芸術「未知の作品2019」を絶賛。「一面の焼け野原のようなのに、力強さが感じられる」と話していた。
小豆島 モノトーンの空間 印象的
夏会期を迎え、小豆島には新作2点が加わった。小豆島町馬木の旧醤油(しょうゆ)会館に整備された彫刻インスタレーション「静寂の部屋」には、あいにくの雨にもかかわらず観光客らがひっきりなしに訪れた。
作家はベルギー出身のハンス・オプ・デ・ビークさん。部屋の床や壁、書棚などは灰色に塗装され、モノトーンの空間が来場者の想像力をかき立てている。
京都から訪れた学生カップルは「何の素材か分からないが、リアルに作り込まれている」「部屋一面がグレーだが、桜とスイレンの花だけピンクと白の色が付いていて印象的」と感想を語り合っていた。
土庄町の沖之島では、海岸などに「クリスタルダイヤモンド」6千個をちりばめた作品が新たに展開された。
(四国新聞・2019/07/20掲載)