昭和の一こま ほのぼのと 邦坊が絵札描いた「家庭カルタ」灸まん美術館に 広島の男性が寄贈、来館者の声受け
香川県仲多度郡琴平町出身の画家和田邦坊(1899~1992年)が絵札のイラストを手がけた「家庭カルタ」が、灸まん美術館(善通寺市大麻町)に寄贈された。カルタは家庭における教訓を題材に53(昭和28)年ごろに作られたもので、贈り主の男性は「子どもの頃遊んだ懐かしい思い出に浸ってほしい」と話している。
寄贈したのは、カルタ発行者の息子の高田脩さん(69)=広島県=。同館によると、家庭カルタは邦坊がイラストを、書家の故藤原鶴来が読み札を手がけた。「いえのうち 母さんがいて あったかい」「はりきった 姿しんから うつくしい」「あら波に うちかつ人に 育てあげ」―など全48種で構成しており、家族のあるべき姿や家庭での戒めが描かれている。イラストは時事漫画家でもあった邦坊の柔らかいタッチが特徴となっている。
発行した高田さんの父親は琴平町出身で、丸亀児童相談所長や教育研究者として活躍。読み札の内容を考案し、当時東京から帰郷していた邦坊にイラストを依頼したとみられる。
寄贈のきっかけは昨年6月、さぬき市の向井和夫さん(77)が子どもの頃使っていたカルタを探して同館を訪れたこと。同館にはカルタのパネルしかなかったが、向井さんは約70年ぶりの“再会”に感激し、その経緯を学芸員がブログに記していた。
高田さんは父親が作ったカルタについて調べる中で偶然そのブログを発見。父親が邦坊と仕事をしていたことを学芸員から聞き、「自分が持っているより邦坊の地元の人々に思い出に浸ってもらう方が意義深い」と寄贈を決めたという。高田さんは「現代人が失いつつある内容が描かれており、今の子どもたちにも知ってほしい」と話している。
家庭カルタは、同館で開催中の企画展「さぬき歳時記」の一角に展示。印刷したカルタで遊べるコーナーも開設している。
(四国新聞・2024/01/18掲載)