大正から昭和にかけて活躍した木版画家、川瀬巴水(はすい)(1883~1957年)を紹介する高松市美術館開館35周年記念特別展「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」(同館主催、四国新聞社共催)が、24日から高松市紺屋町の同館で開かれる。初期から晩年の作品が並び、季節や天候、時の移ろいを豊かに表現したことから「旅情詩人」とも呼ばれた巴水の世界へいざなう。3月6日まで。


「月嶋の渡舟場 東京十二ヶ月」 (1921年 渡辺木版美術画舗蔵)


 巴水は東京生まれ。新時代の木版画「新版画」を提唱した版元の渡辺庄三郎らと協業して技法を追求。日本の原風景を求めて旅し、四季折々の風景を描き続けた。水や雪といったありのままの自然を表現する力と色彩の豊かさで知られ、海外でも人気が高い。
 今展では代表作ともいわれる「芝増上寺」や「月嶋の渡舟場」「西伊豆木負」など約180点を展示する。「芝増上寺」は関東大震災後の東京の風景を描いた連作の中の一つ。雪が降る中、寺の前を着物姿の女性が傘を差しながら歩く様子が描かれており、雪の白と建物の鮮やかな赤のコントラストが美しい。


「芝増上寺 東京二十景」 (1925年 渡辺木版美術画舗蔵)


 「月嶋の渡舟場」では、東京湾に係留されている船やマント姿の人物、赤ちゃんをおんぶした子どもの姿が見られ、当時の雰囲気が味わえる。このほか、桜越しに富士山を望む景色が広がる「西伊豆木負」や観音寺市豊浜町の風景を描いた「讃州豊浜」なども並ぶ。
 担当学芸員は「どの作品も見応えがある。懐かしさを感じてもらうとともに、作風の変遷も楽しんでほしい」と話している。
 入場料は一般1200円ほか。高校生以下無料。問い合わせは高松市美術館、電話087-823-1711。

会期中のイベント

■記念講演会「川瀬巴水の版画世界」 28日午後1時30分から/1階講堂/定員100人/無料/講師:美術史家・岩切信一郎
■ギャラリートーク(2階展示室。要観覧券) (1)講師:学芸員/2月4日午後2時から(2)講師:ボランティアcivi/同11、12、23、25日、3月3日の午前11時からと午後2時から
■ワークショップ「陰刻版画に挑戦!」 2月10日午前10時から/小学4年生以上対象/3階講座室/定員10人/500円/講師:版画家・下村宏
■新版画の刷りの実演 2月18日午後1時から/1階エントランスホール/無料/実演:刷り師・渡辺英次 解説:渡辺木版美術画舗代表取締役・渡辺章一郎
■ミニコンサート「美しき日本の心を歌う~日本の四季を巡って~」 2月24日午後1時30分から/1階エントランスホール/無料/出演:藤田哲志(フルート)三木ユリ(メゾソプラノ)三木伸哉(バリトン)大山まゆみ(ピアノ)
■市美術館開館35周年記念「野村誠コンサート」 3月3日午後5時15分から/1階エントランスホール/(詳細はホームページに掲載する)

(四国新聞・2024/01/19掲載)


高松市美術館公式サイト



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